118話 ページ18
【慎太郎】
久しぶりにいくつかの仕事が落ち着いて、学校生活もある程度落ち着いていて、合間を縫うようにAの病室を訪れると、今ちょうどリハビリに行ったとのことだった。
前にも何度か一緒に行ったことのある理学療法室を覗いてみれば、ちょうどリハビリを始めたばかりなのか、ぎこちない手つきで義足をつけているA。
一生懸命に先生の話を聞きながら、何度も何度も同じ作業繰り返しているAの、苦しそうな表情。
でも、こちらに気付けば、パッといつも通りの笑顔を向けてくるんだ。
「あ！慎や〜」
緑「よっ。…早くね？もうこんなに頑張ってるの？」
「うん。早く、頑張らないとね。甲子園、出るためには、急ピッチで頑張らんと」
“甲子園で記録員をする”
そんなAの前向きで大きな夢に、仲良い奴らはすごく前向きな気持ちを持っていて、そんなみんなは、いつだってAの背中を押していた。
なによりA本人が、そんな夢…というか、目標に対してものすごく前向きで、いまだって、驚くほどのやる気に満ち溢れていた。
でも俺は、それとはまったく裏腹な感情を持っていた。
素直に、応援をして、背中を押してやる勇気を、どうしても持つことができなかった。
緑「っと」
「あわわ…危ない、危ない」
まだ足がない感覚に慣れていないのか、体のバランスがうまく保てるだけの力がないのか、立ち上がってもすぐに体が傾き、よろけてしまうA。
それでも、Aは立ち上がることをやめない。
「見て、慎！今スムーズに立てたー！」
緑「ふふっ。ん…見てたよ」
そう言って無邪気に笑うAは、そのまま歩こうとしていて、さすがに療法士さんから怒られている。
金属になった、冷たいAの左足。
ただでさえAは坂本勇人の妹であり、たった1人の女性ジャニーズJr.ということで注目の的となる。
それに加えて、今のこの義足姿のAが甲子園に出れば、相当な注目を浴びるはずだ。
緑「ねぇ、嫌じゃないの？」
「んー？…んー。相変わらずストレートやね、慎は」
緑「ごめん…」
でもそんな俺をよそに、“夢が叶うんやもん、どんな風に見られたっていいよ”ってAはさらりと返してしまう。
そしてもう一度、ゆっくりと立ち上がって
真っ直ぐに歩き始めた。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» ありがとうございます！！！ (2020年5月30日 11時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと更新大変だと思います頑張ってください応援していますコロナウイルス流行ってるので気をつけてくださいね (2020年5月27日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年5月20日 22時
