無限の未来【短編7】 (ページ9)

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【髙地】

ドタバタだった秋が、一瞬で過ぎ去ろうとしていた。

Aから話を聞いてもらいたいと電話があって、マネージャーのうーちゃんから、Aの話を聞いてやってほしいと言われて出向いた居酒屋。

黄「呼び出す店が珍しいな」

「…軽く、勢いが欲しくて」

そう言うAは俺がつくなり珍しく生ビールを注文していて、なんとなく緊張してるのが伝わってきた。

でもだからこそ…いい話なんだろうなって思うのは、きっと俺たちにしかない不思議な感覚。

黄「そろそろ聞いてもいいです？」

「…ん」

黄「ハハッ！なにを今更そんな緊張してんの、俺相手に。も〜…大丈夫。俺は、止めないから。Aが決めたことなら、なんでも応援する。…って、昔大我にも言ったし」

「ふふっ。…ん、そだね。信じる、髙地のこと」

まだ確定とちゃうんやけど…と、保険をかけたような言い回しから始まったAからの報告は、俺は個人的に、いつかAには挑戦してほしいと思っていたこと。

それも、Aが兄のように慕う大先輩で、長年いろんなコンサートを手掛けてきた亀梨くんからの大抜擢。

嬉しくないはずはなくて、なんなら俺だってすごく嬉しかった。

ただ、浮かない顔をするAの気持ちも、その表情から手に取るようにわかった。

ツアーのセトリを組むのも、今回は何度も“自信がない”と言っていたAを知っていたから。

黄「…こっちも、自信ない？」

「まぁ…そう、ね」

黄「だから、俺んとこ来た？」

「ふふっ。ぜーんぶバレとる」

黄「当たり前。お前マジでわかりやすすぎるもん」

そんなことはないって喚いてるけど、そうやってプンスカ反抗しながら徐々に、いつもの威勢が戻ってくることにホッとした。

いつものAらしいというか。

黄「A？」

「んー？」

黄「いいんじゃない？自信なくても。…お前は、完璧を求めすぎる。別に悪いことじゃないけど…。でも、もうちょっと挑戦することに大胆になってもいいと思うよ」

「大胆…」

黄「そ、大胆に。怖いもの知らずにはなれないと思う。お前はいっぱい怖いもん知ってるから。でもAはさ…その怖さとの戦い方も、知ってるんだから」

大丈夫だと、俺が太鼓判を押すとカッコつけた俺を見て、Aは嬉しそうに笑っていた。