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【樹】
「樹、ちょっといい…？」
青「んー？おぉ〜…どした、そんな畏まって」
「ちょっと、相談…的な？」
ラジオ前、いつも以上にだいぶ早く着いちゃったもんだからゆっくりとくつろいでる中、どこか緊張した様子で俺を呼び止めたA。
今日のラジオの相談とすれば、随分と緊張しすぎじゃね？なんて思うほど。
その緊張の意味は、中身を聞けば納得で。
「和にぃから、Jr.のコンサートの演出やってみないかって誘われてん」
青「うぇ？…おぉ。なんかすげぇ話ぶっ込まれた気するんだけど。え、直々にってこと？」
「そう。ドリボのお疲れ会でご飯食べ行ったやん？あの時に言うてくれて…」
青「ほーん…すげぇな」
「でもな…迷ってて…。待ってもらってんねん、返事」
あまりに大きな話に俺もちょっとビックリしてるから、当事者のAはなおのことなんだろうと思う。
実際、すごく戸惑ってるのは伝わってくるし。
抜擢をしてもらえたこと自体は、すごく嬉しかったこと。
普段から後輩との関わりが多い方ではないから、どう携わったらいいのかイメージが湧かないこと。
初めましてで、かつまだ幼い小学校低学年の子たちもいる中で、自分の体のことを知らない子たちと深く関わることへの不安。
「話もらった時…一気に、自分の体のことが怖くなった。200人もいるJr.の子…ちゃんと覚えて、向き合ってあげられるんかな、とかさ…」
青「うん」
「8.8の時もあったけど、あれだけ人数集まるからさ。聞こえへんとかで迷惑かけるかなとか。あとは…時期も時期で…来年は、その…5年目で一番大きな節目やし…。今年みたいなことになったり、万が一…」
青「ストップ。…やめとけ、言葉にすんのは」
「…ん」
でも…なんだろう、言葉は後ろ向きに聞こえるのに、その言葉の端々には“やりたい”どころか、“やらないと”なんていう決意さえ感じる強さがあった。
こうして俺に話すことで、心を整理しているような。
青「でも…本当はさ」
「えっ…？」
青「決まってんじゃねぇの？Aの心は」
不安そうに俯いていた顔がゆっくりと上がって、ふと交わった視線が思ったよりも不安そうに揺れてるもんだから、ちょっとビックリ。
青「だーいじょぶだよ、Aなら」
少しは背中を押してやれただろうか。
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作者名：かん。
| 作成日時：2024年3月17日 23時
