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【樹】
朝起きてからずっと、ボーッとテレビを見つめるA。
耳は空っぽで音は聞こえていないんだろうけど…その画面に映るのは昨日の夜から報道の止まない平野たちの話題ばかり。
つい数日前も見たばかりの光景だった。
きっとAなりに整理してるんだと思う。
青「…Aー？(トントン)」
「あっ…」
青「つけなくて、いい。聞きたく、ないっしょ」
「聞きたくないわけやないよ。でも…ちょっと、頭痛い」
青「昨日泣いたからな」
「ふふっ。ん、せやな」
確かに、俺たちが思ってるほどのダメージを受けている様子はなかったA。
それでも、やっぱり寂しさも悔しさもゼロではないわけだから、昨夜は家に帰って頭の整理がつくにつれて、ボロボロと涙が止まらなくなっていたのも事実。
必要以上の心配はしなかった。
これで、いいと思った。
“6人とだけは、離れたくない”
あの言葉に、一緒にいた�眞呂�2人、すぐに笑って当たり前だと返してやれたことだけで十分だと思った。
「…24時間テレビで、会いたい人挙げてほしいって言われて…絶対無理やってわかっててんけど…“安井謙太郎”って書いてん」
青「まじ？」
「うん。…もちろん却下されてまったけど…スタッフさんが伝えてはくれてたみたいで…謙ちゃん、手紙くれてん。そこにな…書いてあったことが…今、私に前向かせてくれてる」
青「それは…聞いても、いいやつ？」
待ってて、と部屋を出たAがしばらくして手に持って帰ってきた手紙。
真っ白な封筒にどこか懐かしい字で書かれた“Aへ”の文字に、トクンと胸が高鳴った。
“あの時、俺たちは出るのが正解だった”
“Aたちは、残るのが正解だった”
そんな二つの文に続いた、言葉。
“意地でも、それを正解にしなくちゃいけなかった”
「きっと…まだ、なにが正解かなんか分からへんし…。選んだこの道が正解だったのかも、分からへん。けど…」
“どこにいても、なにをしてても、絶対にいつかはこの道が正解になる”
青「意地でも、そうしていくだろうからな…俺らは」
「ふふっ。…そゆこと」
だから、悲しくても、寂しくても…もう大丈夫だって。
そう言って前を向くAの横顔を見れば、もうなにも心配はいらないと思えていたんだ。
この時は…。
-Fin-
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作者名：かん。
| 作成日時：2024年3月17日 23時
