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【慎太郎】
歓喜に包まれた追加公演発表。
歓声の中、Aが安心したように涙を流すのが見えて、思わずそばに駆け寄ってしまった。
緑「A、大丈夫？」
「ふふっ。…ん、ごめん。ちょっと、感極まった」
赤「ヘヘッ。嬉しかった？」
「ん、嬉しかったぁ…」
マイクを通さずにそんな話をしていれば、メンバーには少し聞こえていたみたいで、北斗もジェシーも、こっち見てすごく安心した顔をしていた。
“正直…相当厳しいと思いますよ？”
病院の先生から、そんな風に釘を刺されたりもした。
それでも、譲れないもの。
「ドーム…楽しみやなぁ」
赤「んふふっ。ずっと言ってる」
「いやさ、ようやく発表できたし…嬉しい、めっちゃ」
ドームで公演ができるかもしれないと分かった時の、子どもみたいにはしゃぐ嬉しそうなAの姿。
制限が解除されると知った時の、自分たちのコンサートでもそれが叶うと分かった時の、喜びと不安の入り混じったような表情。
そのどちらもを知ってるから、“楽しみ”と口にするAを、何度も嬉しいと繰り返すAを見て、俺までグッと込み上げるものがあった。
着替え場に行ってもなかなか泣きやめないもんだから、樹には心配されながら突っ込まれてたけど。
青「んはっ。もう一息ついちゃってんじゃん」
「ん、ゆっくり…する、時間…ここは」
黒「うん、ゆっくりでいいよ」
緑「Aー？これ、ドリンク置いとくから飲んでね？」
「ん、飲んどるよ」
青「A、少ねぇ。全然減ってねえ。これじゃ後半足りなくなるからちゃんと飲んで？」
「…ん」
最後の最後まで、保険のように2パターンのセットリストを組んで、ギリギリまでどちらに転んでも大丈夫なように道を残していた俺たち。
選ばれたのがどちらかなんて、言うまでもない。
Aの万が一をカバーするシュミレーションだって何回も重ねたし、AもAで、自分にできることを探し続けた。
先生に言われた“厳しさ”を超える術を探し続けた。
だからこそ、自信があった。
駆け抜けた初日は、そんな自信を胸に無事に終わった。
「ドームでも、待ってるよぉー！」
勝負の幕が、開いた。
開くまでは不安で仕方なくても、いつも“大丈夫”って思わせてくれるのは、この歓声のおかげだ。
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作者名：かん。
| 作成日時：2024年3月17日 23時
