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【樹】
スマートのかけらもない、ダッセェ告白から始まったあの日から気づけばもう4年。
この4年で、2度。
俺は、Aと確証のない約束を交わした。
“この指、俺に予約させて”
“A、結婚しよっか…”
ようやくデビューがが決まって、少なくともこれまでよりは確かなものを手に入れられたって、そう感じたから言えた言葉。
それでもその言葉を現実にするにはまだ、俺たちはあまりに未熟すぎた。
もしかすると、あの言葉で俺はAを何年も縛りつけてしまったのかもしれないけど、それでも一緒にいてくれたAと、これからも…ようやくそれを叶えられるだけの俺たちになれたんじゃないかって。
「樹ぃ〜」
青「お、いいじゃん」
「後ろ留めてもらっていい？」
青「ん、後ろ向いて」
3度目の年越しは、まさかのトップバッタースタート。
任された大役に緊張もしつつ、このポジションを任せてもらえたことへの喜びも大きかった。
そんな本番に向けた、束の間のひと時。
青「ん、オッケー」
「ありがとぉ。あ…マリとね、話せたよ」
青「ん、そっか」
「…マリさぁ、すっごく大人やった。自分でこれからの道を決めて、自分がどうなりたいのか…うん、めちゃくちゃ考えてて。…わたしの知らない、カッコいいマリがいた」
“あんなキレイな目で楽しそうに未来語ってんの見たら、背中押すしかないやん”
そう話すAも、どこか楽しそうで。
たった数ヶ月のJr.期間で、訳も分からないままにデビューを言い渡されたマリウス。
そのデビュー決定と入れ違うように、活動を休止せざるを得なかったA。
「…正直な、好きになれんかった時もあったよ。マリだけじゃない。勝利のことも、聡ちゃんのことも。けど…今なら、わかる」
青「ん、そっか」
「マリ、ぜーんぶわかったみたいに“いつでも会いにくるからね”って笑うんよ。もう、負け負け。ぜーんぶ負け」
青「んはっ！なんの負けだよ」
「ハハッ！確かに」
青「…よかった」
「…ん、よかった」
たかが1日。
西暦の数がひとつ増えたからって、別になにが変わるわけじゃない。
それでもやっぱり…。
青「っし。行くか」
「ん、行こか！」
本番前、いつものように足を鳴らすAの背中が、いつもより大きく見えた、そんな年の瀬。
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作者名：かん。
| 作成日時：2024年3月17日 23時
