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【ジェシー】
綺麗だって、そう思った。
歌詞カードと向き合い、ツーっと一筋涙を流したAの姿を、綺麗だと。
「ハハッ…っ、これ…ええなぁ…」
何回も、ええなぁ…好きやなぁ…って繰り返しては、ポロポロと涙を流していた。
ガンガンと音の漏れ聞こえるヘッドホン。
きっと今、なにを話してもAに届くことはない。
けど…今は、それが良かった。
緑「ちゃんと、一個一個…噛み締めてるね。よかった…」
赤「うん。…きっと、いい曲なんだろうね」
きっと、考えがあってのことだと思う。
普段は一斉にグループに送られてくるデモを、マネージャー陣がAにだけ先に聞いてほしいと用意をしてくれたその曲。
Aの耳から漏れる音ではまだどんな歌詞なのかはわからないけど、Aの様子を見ている限り、間違いはないんだと思う。
黒「あらっ…随分と勝負かけるのね」
赤「チームSixTONESの、敏腕マネージャーだからね」
黄「あの感じなら…大丈夫そうだな」
桃「だね」
ずっと、不安だった。
Aが、壊れちゃうんじゃないかって。
明日からのミュージックソンだって、心も身体もお医者さんから止められる本当にギリギリの状態だった。
今日の本番前のこともあったし。
青「出番の量は変えずにいくって。ラジオだし、話振るの少なめにしてあげて」
赤「ん、了解。ま、全員無理せずいこうね」
青「…ん。ありがと、ジェシー」
明日もいよいよ24時間のミュージックソン。
Aが俺たちを呼び止めたのは、そんな時だった。
「…この曲、なんも言わんと入れさせてほしい」
震える声で、俯いて、相当勇気を出して俺たちに伝えている姿に、心が揺さぶられた。
普段はみんなで決めるCDの収録曲。
当たり前だけどAだけじゃなく、誰かがこんな風に曲に対して“絶対”を強調することなんてなかった。
もちろん、Aだってそれをわかっているはず。
わかった上で伝えてるからこそ、その声が震えていたんだと思う。
でも…。
桃「…いいんじゃない？」
「えっ…」
桃「持てたんでしょ？確信」
その手が、決して離れないように。
Aの頬に一筋流れた涙。
その瞳に、もう一度灯る希望の光。
きっとこの先だって、俺たちを導いてくれるはずだから。
7人、いれば…。
-Fin-
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作者名：かん。
| 作成日時：2024年3月17日 23時
