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【目黒】
渡辺「お前、Aの彼氏？」
目黒「えっ、あ…っ、え…」
渡辺「…ふははっ、ごめんごめん。取って食ったりしないから。ありがとね、救急車呼んでくれて。俺、渡辺。ここで看護師してて、あいつら家族とは昔からの付き合い」
目黒「あ…しょっぴ…」
渡辺「あ？」
お互い、名前だけは知っていた相手。
実際に会ってしっかり話すのは、これが初めて。
そんな俺にも、真剣にAの体の現状を伝えてくれる渡辺さん。
渡辺「まぁ、今日のはインスリン打つのミスったんだろうな。なんか目盛りおかしかったし。なんでそうなったのかは…本人に聞かなきゃわかんないけど」
目黒「…A、大丈夫ですか？」
渡辺「うん、大丈夫。俺出てくる時、普通にコミュニケーション取れてたし」
俺を安心させるためなのかもしれないけど、“あいつ、ほんと我儘なのよ〜”って笑ってる渡辺さんの優しい顔に、声色に、ただただ安心をした。
ずっと震えていた俺の手も、心なしか温かくなってきた気がした。
渡辺「…ありがとね、めぐ先輩」
目黒「えっ？」
渡辺「ずーっと、君にお礼が言いたかった。A、言わないし、見せないけど…昔からずっと、自分の病気のことすげぇ気にしててさ。君にはすごく、救われてたと思う。病気とか、一切関係なくAをフラットに受け止めてくれたこと、少なくとも俺は、すげぇ感謝してる」
目黒「…そんな」
自信が、なかった。
自信を、無くしかけた。
これから先、Aを支え、一緒に歩んでいく自信を。
そのくらい、今日目の前でAが倒れて、自分がどうにかするしかないのに、なにもできない自分が嫌だった。
でも…渡辺さんの言葉に救われた。
渡辺「…まだまだこれからだと思うけどさ。これからも、頼むね。Aのこと」
目黒「…！もちろんです」
渡辺「ふははっ！気合い十分やん、頼もしい。お…帰ってきた。けど…寝てんなぁ〜」
岩本「もう寝かせたわ。お…君が目黒くんね〜。ありがとね、助かった」
“これからもよろしくな”
Aをずっとそばで見てきた2人からの、優しい言葉。
ものすごく、嬉しかった。
めちゃくちゃ怖かったけど…安心した顔で眠るAを前にそんな言葉聞いたら…失いかけた自信が、また少しだけ戻ってくれた気がしたんだ。
-Fin-
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年11月30日 20時
