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【目黒】
「めぐ先輩！」
目黒「ハハッ！ゆっくりでいいって。危ないから」
待ち合わせの、3分前。
Aも早めに着いてくれたのに、少し前からソワソワの止まらない俺を見つけて、パッと笑顔を咲かせて駆けてくる姿が愛おしくてたまらない。
まだ治療の影響で骨も弱ければ、出血だって止まりにくいってお兄さんの北斗くんから聞いてるから、口では慌てて止めてるけど…やっぱり、そんな嬉しそうな顔で来てくれたら嬉しいわけ。
俺だって、ずっとこの日を楽しみにしてたんだから。
それが、俺だけじゃなかったことを思い知らせてくれるみたいで。
目黒「かわいい、髪巻いてる」
「へへっ。にぃにがやってくれました」
目黒「へぇ〜！すごいね、北斗くん」
「昔から、髪はよく巻いたりアレンジしてくれるんです。にぃにが」
目黒「ふふっ。うち、男兄弟だからなぁ〜。でも、妹いてもしないかも、そんなこと」
「歳離れてるし…うち、ママいないから。にぃにが色んなことしてくれてました、昔から。半分、ママみたい」
目黒「あ、お弁当も北斗くんが作ってなかった？」
ニコニコと笑いながら、大好きな家族の話をするAが一番好き。
男でひとつで、病気がちなAを支えていつも一緒に前を向いてくれたというお父さん。
同じように病気を抱えながらも、まっすぐ強く生きるお手本で、誰よりも強い味方で仲間だというお兄さんの北斗くん。
Aに、命を分けてくれた優吾さん。
それに、血のつながりなんて関係なくAを小さな頃から家族同然に育ててくれた、深澤さんや阿部さん、そしてジェシーくん。
誰のことも、優しい顔で話すAが大好きで。
「…めぐ先輩ー？」
目黒「ん？あぁ、ごめん。ちょっと考え事してた。あ、てかさ…」
「…ん？」
目黒「そのー…さ。やめない？…めぐ、先輩？あと…敬語も。…彼氏と、彼女…だから」
「…っ！」
俺も、ちょっと勇気出して今までの“当たり前”を壊してみたんだけど…ふと顔を覗けば、真っ赤な顔で目を逸らして口籠るAが、また愛おしくて。
小さな声で聞こえた、“蓮…くん？”なんて言葉が、すっごく可愛くて。
「ふふっ。蓮くん」
目黒「それは…反則…かもだわ」
嬉しそうに俺の名を繰り返すAに、俺も少し…余裕がなかったり。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年11月30日 20時
