Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ38)

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【北斗】

黒「あれ、父さんは？」

阿部「Aんとこ。今日、ダメっぽくて…スイミングも休ませてるんだよね。明日学校も休むと思う」

黒「あ、そんな感じなんだ」

空手終わって家に帰ると、いつもより少し静かな家。

夕飯は用意されていたけど、そこに団欒があるわけではなくて、話を聞けばなんとなく察した通りの状態。

新学期は毎年環境が変わったりしてAの苦手な時期だけど、それにしては今年は頑張っていた方で、親も父さんも少し拍子抜けをしてた頃。

俺自身も、そうならないようには気をつけていたし、Aに風邪引かせちゃわないようにとも思っていたけど、血糖ばかりはある程度仕方がない。

黄「おっ、北斗おかえり〜」

黒「ただいま。…A、グズってる？」

黄「大不機嫌。急外行くほどじゃないけど、そこそこキツいっぽい。スイミングも行けなかったのと、明日学校休むのも重なってるから…まぁ、心のコントロールいかないんだろうね」

黒「おぉ。…それ俺あんま行かないほうがいいね」

黄「かもな」

優吾曰く、一時は念のため病院に連れて行こうかも迷ったみたいだけど、ひとまず血糖は落ち着いて回復してきたみたいなのと、なにより病院嫌がったらしい。

いいのか悪いのか、Aも俺もチビの時から慣れっこだから病院嫌がるなんてあまりないことだけど…珍しいな。

それだけ心が不安定なんだろうから、それなら父さんと2人で思いっきり甘えさせてあげたいし。

そんなこと思いながら眠りについて、どれくらい時間がだっただろう。

青「ごめん、師匠。岩本先生…」

深澤「大丈夫、もう連絡入れた！」

黄「樹、A戻しそう！」

青「うわ、まじか…」

阿部「樹、翔太こっち向かってくれてるって」

ガタガタと騒がしい後に目が覚めて、パッと枕元の時計を見ればまだ深夜。

大人たちの声と慌てた様子から、微睡の中でもAに何かがあったんだと察するのに時間はかからなかった。

俺もなにかしなきゃ…なんて、咄嗟に頭が働いてAの部屋に行くもそこはもぬけの殻で、ここにいないならと、下のリビングへ向かう途中。

まだ寝ぼけていたのか、焦りすぎていたのかはよくわからない。

黄「え！北斗っ！？ちょ、樹！北斗！落ちた！」

優吾の慌てる声だけが、耳に残っていた。