Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ34)

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【樹】

ちぃの体調がなかなか良くならなくて、もしかすると入院しないとかも…なんていう、ちょっとギリギリな状況。

お腹の子のこともあるし。

それでも何とか自宅療養で過ごしたいというちぃの気持ちを今はせめて優先できる状況だと主治医の先生も協力をしてくれて、なんとか。

うちにはまだ幼い北斗もいるからって。

黒「パパぁ…」

青「んー？なに、北斗」

黒「あのね…っ」

『ｹﾎｯ…ｹﾎｯ、ｹﾞﾎｹﾞﾎｹﾞﾎｯ、ﾊｯ…ﾋｭ』

青「ちぃっ！」

黒「ママっ…！ママ…」

青「だーいじょぶ、北斗。ちょっと、離れて？ママ、大丈夫だから」

苦しそうに咳き込んで、キュッと胸の辺りを掴む姿。

何回見てきただろう。

ちぃがこうして発作に苦しむ姿も、それを見て、怯えた顔した北斗がちぃに縋りつくみたいに駆け寄っては離れられなくなるそんな姿も。

たとえちぃが入院するって腹を括ったとしても、今はきっと北斗がちぃから離れることなんてできやしないんだと思う。

青「…落ち着いた？」

『ん…っ、も…だいじょうぶ…』

青「あれ…？北斗…」

『…ほっ、く…ん…っ』

青「…あっちの部屋行ってるかな？見てきてもいい？」

『…私もっ』

青「ダメ。…大人しく、休んでて？そんなんじゃ、北斗また不安になるから」

そう伝えてやんわりと止めれば、悔しそうな顔しながらも頷くちぃ。

自分のことなんかそっちのけで、子どものことが心配なことは痛いほどよく分かってるつもりだけど…さすがに今回ばかりは止めさせてほしい。

青「北斗ー？…あれ？いねぇ」

北斗のことだから、俺らに迷惑かけないように…なんて子どもらしくない考えでおもちゃの部屋で遊んでたりするんだろうと思ったけど…見当違い。

それならばどこにいるのかと家中を探し回れば、北斗はいじらしく俺らの部屋に逃げ込んでいた。

青「あれ…北斗？」

黒「へへっ…。ん…だいじょーぶ。ほっくん、お兄さんだから…っ」

青「…っ！」

“ほっくん、お兄さんだから！”

あぁ…北斗が誇らしげに言ったそんな言葉、鵜呑みにしなきゃよかった。

なんて…。

涙流して、顔真っ赤にして必死に笑ってる北斗を前にようやく気づくんじゃ、遅すぎた。

なぁ、北斗…？

もう二度と“お兄さん”だなんて呼ばないから…もっと、甘えてよ。