Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ31)

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おにいさんページ31

【樹】

黒「ほっくん、おにいさんだからできる！」

これ、最近の北斗の口癖。

この春から保育園に通いだして、急にこんなこと言うようになったうちの息子。

めっちゃかわいいっしょ？

保育園でも、何かできるたびに先生が“〇〇くん、カッコいいね！お兄さんみたいだ！”なんて褒めてくれるみたいで、それが嬉しくて仕方ないらしい。

家でも、“ほっくん、カッいい？ほっくん、お兄さん？”なんてしきりに聞いてくる。

俺も嫁もそんなこと言って、少しずつできることを増やす北斗がかわいいと同時に単純にすごく嬉しくて、その都度これでもかと褒めちぎった。

『すごーい！ほっくん、そんなこともできるの？お兄さんじゃん！』

黒「へへっ！ぱぱ、ほっくんすごいー？」

青「おぉ、すげぇじゃん。ま、お兄さんの北斗なら、この薬くらいへっちゃらだよな〜」

『ふふっ。飲めたらかっこいいね！』

お兄さんブームと合わせてやってきていたのが、ほんの少しの反抗期的な。

思ったよりもイヤイヤ期はなくて、案外こんなものかと思っていた北斗にやってきたそんな時期。

しかも厄介なことに、嫌がるのが薬だとか病院だとか…まぁ子どもなら仕方のないことだけど、北斗にとっては嫌がられちゃうとかなり困ってしまうもので…。

嫌な気持ちもわかるし、俺らも心苦しさはあるけどさ。

黒「パパぁ、飲んだ」

青「おっ、すげぇ〜。さすが…」

黒「お兄さんだからね、ほっくん！」

そんな北斗の“お兄さんブーム”は、学年がひとつ上がってもまだ効力を発揮してくれていた。

けど、どこか甘えん坊になった気がしないでもない。

黒「…ほっくん、これ嫌ぁ」

青「ん？どしたぁ。北斗、この間できたじゃん」

黒「この前はできたけど、今日は嫌…」

青「なんでぇ？北斗、お兄さんだからできる〜って言ってたやん」

黒「…っ、ほっくん、おにいさ…だけどっ、でもっ…。でもほっくん…ほっくん、ママがいい…っ」

『おーっ、と！待って、待って。ほっくん、走るとコンコン出ちゃうからね、ママ逃げないから。…どーしたぁ？寂しくなっちゃった？』

少し困った顔でこちらを見るちぃと、その腕にギュッとしがみつく北斗。

ちょっと心が不安定かな、なんて…その理由がなんとなくわかったのは、それから数日のことだった。