Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ28)

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【優吾】

青「兄貴ぃ〜」

黄「んー？」

青「明日、北斗病院連れてってくんね？俺、明日立て込んでてさ…」

ノックもなしにガチャリとドアを開けて入ってきた樹の様子を見れば、きっと冷静装ってるけど、内心ヒヤヒヤしてるというか、焦ってるというか。

明日まで待ってて大丈夫なのか、なんて質問は聞くだけ野暮なのかもしれない。

黄「いいよ、連れてくわ。学校は？休むって？」

青「休む気なさそうだけど、休ませる。ちょっとあれは、無理そうだわ」

黄「そんなに？」

青「だってずっとゲホゲホしてんだもん。いつ喘息出てきても不思議じゃねぇわ」

いつかのどこかの誰かみたいだな、と…喉元まで出かけた言葉を飲み込んで、樹からの頼みを快く受け取れば、心配そうに漏れた樹のため息。

そうやってため息こぼす樹だって、北斗と同じ遊びたい盛りだったあの頃は、何度も体調崩したの押し切って同じように母ちゃんにため息つかせてたんだけど…。

いや…だからこそ、なのかな。

今が一番楽しくて仕方なくて…時間なんて、惜しくて惜しくて仕方がないことを、誰よりも分かってるから。

こうやって、想いが受け継がれていくのだろうか…なんて思ってみたり。

黄「北斗ー？」

黒「…っ、ｹﾎｯ」

黄「おーい、起きろー」

黒「…ほっといて」

黄「と、言われましてもね。準備しといてね、樹もう朝イチで順番取ってきてくれてるから」

黒「…行かない」

黄「んじゃ、30分後にまた来るわ」

全く噛み合っていない甥っ子との会話。

樹ともこんなやりとり、何度もしてたっけ。

数日で治るだろうと思っていた体調が思うように回復しなくて、もう病院へ行かなきゃいけないことだって分かってるけど、受け入れたくない…みたいな。

“わかんねぇだろうな、兄ちゃんには”

最後にはそう言って、ポロッと悔しそうに涙を流した樹が思い浮かんで、こんな時なのにその懐かしさに思わず頬が緩んだ。

黄「おっ。準備できた？」

黒「…ん」

黄「なんつー顔してんだよ、お前は小学生か」

黒「…うるさいな」

黄「ん…。行こっか」

目元が少し赤いのも、瞳が潤んでいるのも熱のせいでもなんでもない。

悔しさの滲むその眼差しが、俺にはやたら眩しく思えた。

こんなにも純粋に青春を追い求める、甥っ子の真っすぐさが。