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【慎太郎】
偶然、今日は田中家の大人が出払っていた。
そんな最悪なタイミングで、偶然北斗の体調が悪化した。
ちょっとやそっとでは済まない、ここ最近の北斗からしたら、お世辞にも“よくある”なんて言うことのできない、酷めの不整脈。
俺がAと帰宅した頃には、もう随分発作起きてから時間も経ってたんだと思う。
それでも…偶然、俺がここにいられた。
緑「北斗、ちょっと体起こすよ。…っし、そのまま俺に体預けていいよ。そうそう…」
黒「ﾊｧｯ…ﾊｧｯ、ｯｸ、っ…ﾝﾊｯ、ﾊｧｯﾊｯ」
緑「大丈夫、大丈夫。薬飲んでみよ。…病院は、樹帰ってきてからにしよう。な？」
ハクハクと必死に酸素を求める苦しそうな表情や、細い腕から伝わる不規則なリズムに焦りはしたけど、俺まで焦ったら北斗がこれ以上に追い詰められてしまう気がして。
ただ、必死にできる限りをした。
北斗が、少しでも甘えてくれるように。
青「悪りぃ、慎太郎。マジ助かった」
緑「30分くらい前に薬飲んで、だいぶ落ち着いた。…やっぱり病院とか…連れてった方がよかった？」
青「ハハッ。んーん、まぁ…大丈夫。どうせ、あいつが嫌がったんでしょ」
緑「…まぁ」
青「なら大丈夫。ありがとな、北斗のわがまま止めずに聞いてくれて」
“あと、こいつの面倒も”って、俺のあぐらに突っ伏して寝ちゃったAの小さな頭を撫でながら笑う樹。
ちょっとぴり複雑そうな顔して、“こいつなりに、気持ち揺れてんだろうな”って。
青「もうすぐ反抗期とかくんだろうな、北斗も」
緑「まぁね」
青「だからさ、ありがたいんだよ。お前とか、風磨みたいな存在」
緑「えっ…？」
青「俺とか兄貴とか…先生たちもか。どうしても北斗の体のこと先読みして止めたくなっちゃうから。まぁ、そうならないように気をつけてはいるけど…そんな気遣いさえ鬱陶しいだろ。後先顧みず突っ走れる、“青春時代”には」
これからもそのままでいてやって欲しいっていう樹の言葉に、もちろん俺の答えはイエスでしかなかった。
黒「しん…」
緑「お？」
黒「ありがと、ね。しんたろ…」
緑「ふふっ。ん、全然よ」
“しんたろーは、おれのヒーローだね”
チビの時と変わらない、そんな言葉をかけてくれる北斗の突き出したグーサインに誓った。
-Fin-
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年11月30日 20時
