Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ24)

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【北斗】

テストが終わって塾へ行く友達を見送り、時間の許す限り一人明日に残された科目のテキストと向き合った図書室。

“北斗くん”なんて呼ばれた声にビクッと肩を上げてしまうほど、周りが見えないくらいに集中をしたまま、声をかけられた時にはもう閉館時間。

黒「はぁっ…」

家に着くと、途端に学校ではピンピンに張っていた気持ちがふと緩んで、なんだか急に眠たくなった気もした。

いつもならリビングまで聞こえてくる父さんたちが仕事してる音が一切ないのが気になった時、ふとカレンダーのメモが目に入った。

“じゅり・ふっか→現場”
“あべちゃん→今日の夜まで出張”
“ゆうご→残業予定”
“A→パパが現場の帰りに迎えに行きます。気にせずで大丈夫◎”

多分、俺宛のメモ。

いつもはうるさいくらいに賑やかな我が家だから、なんとなくこのシンとした空気に心臓がキュッとする。

静かな空間は、余計なことが頭に浮かぶ。

解けなかった問題…。

思ったより簡単だったね、なんていう友達の声…。

ガタッと落ちた、前回の成績…。

黒「…っ、ﾊｧｯ…っ、ﾊｯ…ﾝｯ…ﾊｧ、ﾌｯ……」

ドクン、ドクンと脈打つ鼓動がうるさくて仕方ない。

うるさくて、苦しくて…。

そのうち、その鼓動のリズムが一定でなくなってくるのが怖くて、不安で仕方なくて…でも、自分じゃどうしていいのかわかんなくて…。

頭ではなんとなく、この不規則な鼓動が何かなんてわかってるんだけど、身体が言うことを聞いてくれない。

どうにか誰かに電話でもしなければと、ケータイに手を伸ばした時だった。

緑「っ！北斗っ！」

「にぃ、に…っ」

黒「ﾊｧ、っ…ﾊｧｯ…ﾊｧｯ、ｯｸ、っ…ﾝﾊｯ、ﾊｧｯﾊｯ」

Aと一緒に予想外の帰宅をしてきたのは、父さんでもふっかでもなく、慎太郎。

驚いた顔をしながら、慣れていない慎太郎は焦ってもいるだろう中、それでも俺を安心させるみたいに、ずっと“大丈夫だからな”って繰り返してくれていた。

黒「ﾊｧ…っ、し…たろ…っ、んっ…」

緑「ん、しんどいな…。病院、行こっか…な？」

黒「ゃ…っ、びょいん…は…っ、ﾊｧｯ…」

緑「いや、でも…」

黒「おね、がぃ…っ…んっ、ﾊｧ、ｳｯ…ﾝﾊｧｯ、ﾊｧｯ…」

病院なんて行ったら…明日のテストが…。