Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ22)

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【北斗】

いつも通り、頑張った。

いつも通り頑張ったのに、ガタンと落ちてしまった成績。

手応えがなかったわけじゃない。

だから、悔しくて。

我が家の頭脳担当阿部ちゃんは、“たまにはそんな時もあるよ”って励ましてくれたし、優吾やふっかも、“俺、そんな成績取ったら泣いて喜ぶよ？”なんて笑ってた。

父さんも、“北斗は全力で頑張ったんだから、それだけで100点でよくね？”ってグシャグシャと頭を撫でてくれたけど…俺は、どうしてもそんな風に捉えることができなかった。

黒「もしもし？しんたろー？うん…そう、分かんなくて…阿部ちゃん、出張行っちゃって…お仕事だから…。あ、慎太郎もお仕事忙しいのはわかってんだけど…」

緑『あははっ！なに焦ってるの、北斗。俺、別に迷惑とか思ってないよ？んで…えーっと…あぁ、この問題ね。これ難しかったっしょ』

黒「うん…」

緑『んー？なに、心配んなった？』

黒「解説見ても、意味わかんなくて…」

こうして慎太郎にコッソリ電話するの、これでもう3日連続だ。

最初に電話したあと、慎太郎が“なんでも聞きな”って、わざわざメッセージをくれたのがなんか妙に残っていて、こうして今日も俺は慎太郎を頼りにしている。

まぁ…慎太郎とうちの家族の関係的に、コッソリが無理なことくらい中学生の俺でもわかってはいるけど。

黒「あっ、できた…」

緑『おっ。ご理解いただけたでしょうか？』

黒「うん。ありがと、しんたろ」

緑『いーえ。…あんま、詰め込みすぎんなよ？』

黒「…っ。わかっ…」

緑『あんま頭いっぱいに詰め込みすぎると、記憶こぼれ落ちちゃうから。大切にな！』

無理すんな、って意味の“詰め込みすぎんな”かと思ったから、思わず反抗的に“わかってる”なんて返したくなったけど…ガハガハ笑ってる電話口の慎太郎の声に、心がちょっとだけ軽くなった気がした。

もうちょっと、頑張れるような気がした。

青「あれ？おにぎり食ってねぇじゃん」

黒「…ごめん」

青「んはっ！謝んなくていいけどさ。腹、空かね？」

黒「今は…」

別に…と言おうとした俺の言葉を遮るように鳴った、腹の虫。

クスッと笑って、不恰好なおにぎりを差し出す父さんの手を拒否することなんて、できなかった。

でも、そんな時間さえ…惜しかった。