Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ3)

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【北斗】

“Aー？A、パパの声聞こえるー？Aー！”

真夜中のこと。

2階まで響くほどの声で、父さんがAの声を何度も叫ぶのが聞こえて嫌な予感がした。

慌ててリビングへ降りれば、大人たちが慌てて動き回っていて、これはヤバいやつだって長年の経験と勘ですぐに察した。

けど、事態は俺が思ってたよりもよっぽど。

青「悪りぃ、兄貴！これ救急車だわ、このまま連れてくのちょっと無理」

黄「おっけ、俺呼ぶ。樹、そっち任せるわ。お、北斗…ごめん、うるさかった？ごめんね、明日も早いよね…」

黒「いや、そんなの…。それより、A…」

黄「…ダメだね、だいぶ朦朧としてて」

黒「ヤバい、やつ…？」

黄「かも…しんないね」

俺がもう高校生だから、優吾だって隠したところで俺が察することも、理解がそこに及ぶこともわかって、包み隠さず言ってくれたんだろうけど…。

目の前の光景が、やけに不安なのは…どうしてだろう。

普段なら、きっと大丈夫って…Aは強いから、これまでだって沢山しんどいこと乗り越えてきたAだからって…そう、思えたはずなのに。

黄「…北斗？大丈夫？」

黒「え…」

黄「なんか、すっげぇ不安そうだったから…大丈夫かなって思って。…俺、救急車だけ対応したらすぐ戻ってくる。だから、それまで…」

黒「いや、っ…大丈夫。大丈夫」

なんとなく、ここにいたらダメな気がした。

優吾だって、父さんやみんなだって…なにより、Aの体がいっぱいいっぱいなのに。

こんな俺がここにいたら…。

そう思っちゃって、優吾に背を向けた。

“A、肺炎起こしてた。しばらく、家帰れないかも。すまん”

父さんからそんなメッセージが入っていたのは、もう明け方近くのことで。

普段なら家を出てしばらくすれば入るであろうその連絡の時間さえ、もうほとんど朝なのに、誰も動き出している空気のない静かすぎる家さえ、俺を不安にさせるのには十分すぎた。

“俺も病院いる。仕事休んだし、北斗学校行くまでには一回帰るね”

優吾から入っていたそんな連絡は嬉しかったけど…返したメッセージは、“俺、今日早いから大丈夫。A、ゆっくりついててあげて”なんて。

素直になれない…こんな時まで、思春期が邪魔をする自分が、今日ばかりは。