壁を壁と思わないこと ページ16
【樹】
真っ白な天井は、もう見飽きた。
必要以上にパリッと整い固すぎるシーツも、嫌に冷たい布団も…昼夜問わず、何かしらの音が響いているこの空間も何もかも。
飽きたんじゃなく、早く抜け出したかった。
けど、抜け出せない理由だって心得ていた。
渡辺「うぃ〜」
青「んぁれ…暇なの…？」
渡辺「あのねぇ…」
青「ふふっ。…わかってる、ありがとね。…ﾊｧｯ」
渡辺「…まだしんどそうだね」
青「ん。…久々に、ちゃんと、苦しいわ」
ガキん時から、何度か助けてもらった優しいしょっぴーの手のひらが、俺の薄い胸を行き来する。
それが、妙に心地よかった。
どうしたって1秒も早く抜け出したいこの空間だけど…ここにいれば、しょっぴーと2人のこの空間なら、ありのままの、弱虫な自分であることに、嫌悪を抱かずに済むのもまた、事実だった。
青「ｹﾞﾎｯ…ｹﾞﾎｯ、ｹﾞﾎｯ…ﾊｧｯ、ﾋｭｩｯ…ｾﾞﾎｯ、ｾﾞｪ…ｹﾞﾎｯ…」
渡辺「っと…背中ごめん」
青「ﾊｧｯ、ﾋｭｩｯ…ｾﾞﾎｯ、ｾﾞｪーｯ、ｴﾎｯ…ごめ、しょぴ…っ、ｹﾎｹﾎｯ、きゅーにゅ…」
渡辺「ん、した方がよさそうだな。…はい、持て…そうにないな、頑張ってくわえて〜…」
青「…ｹﾞﾎｯ、ｹﾞﾎｯ…ﾊｧｯ、た、ま…っ、ｹﾞﾎｯ、ｹﾞﾎｯ…」
渡辺「おう、待つ待つ。焦んなくていいから」
慣れたようにベッド上げてくれて、変に力の入った体を痛めないように、さりげなくサポートしてくれたり…。
しょっぴーには、頭上がんなさすぎる。
と、同時に…。
青「ごめん…っ、兄貴に…」
渡辺「ん、連絡しとくわ」
青「…さんきゅ。ﾊｧｯ」
こんな感じじゃ、来てもらったところで心配かけちゃうだけだから、それはなんだか申し訳なくて、兄貴の見舞いを断ろうかって。
でも、それすらできそうになくて…しょっぴーに、代わりに連絡してもらう始末。
青「ﾊｧｯ…っ」
渡辺「しんどい？」
青「ん…ﾊｧ、こころ、ね…」
渡辺「まぁ〜…そうだよな」
青「会いて…な…っ」
ちぃ？って…すかさず聞いてくるしょっぴーに、思わず苦笑いしてしまった。
ちぃが亡くなって、半年。
時期的なものも重なって、張り詰めてたものがプツッと切れたみたいに、崩れた体調。
でも…。
青「…子どもたちだよ。ばか…」
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年11月30日 20時
