Just call my name, when you need me【短編集】11 (ページ15)

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【樹】

佐久間「おかえり、北斗」

黒「さっくん、ただいまぁ〜。あ！おとーさん！」

青「ふふっ。ん、おかえり」

一歩、また、一歩のリハビリが苦痛だった北斗に、佐久間くんがお話をしてくれて数日。

まだまだリハビリは少しずつしか進められないけど、北斗はちゃんとそのペースの必要性を理解して、きっともどかしさは感じているだろうけど、それでも頑張っている。

だから、俺は俺にできること。

青「A、お昼寝起きたって。電話してみる？」

黒「するっ！優吾もいる？」

青「優吾は、お仕事。ふっかかなぁ〜？」

黒「今日ね、僕階段のリハビリやった。前はできなかったけど、先生が今日からやってみようって！ふっかにも自慢する！」

青「ハハッ！わーかった、わかった。わかったから、ちょっと落ち着け。そんな大きい声では、電話できませーん」

佐久間くんが話をしてくれてから、変わったこと。

今日はあれができた、これができたと、北斗が楽しそうに自分の歩みを教えてくれるようになった。

大きな、進歩。

黒「A〜？」

『にぃにっ！』

2人して、なにが楽しいのかは分かんないけど、ずっと笑ってなにか話してて、時々師匠の笑い声が聞こえてきたりして。

でも間違いなく、この1日数分の時間は北斗にとってエネルギーにもブレーキにもなってくれてるんだなって思うんだ。

黒「おとーさん、シール」

青「ん？あ、おう。はい」

黒「よしっ。…あとぉ、1、2、3…あと8段！」

青「ふふっ。だいぶ進んだな」

黒「うん。ズルしないで、一段ずつ。そしたら、転んだりしなくなるからって、さっくん教えてくれた」

北斗のベッド横に貼られた、お山のシート。

“ころがりおちないように、がんばろう！”

佐久間くんの字で、そう書かれたシートには、ひとつ、またひとつと北斗の手でシールが増やされていた。

転がり落ちちゃったらまたやり直しなんだよって、だから一段飛ばしじゃダメなんだって、ひとつひとつ重ねなきゃいけないんだって。

そうやって北斗は北斗なりに、受け入れなくちゃいけない現実に、きちんと納得をしていた。

あと、8段。

大きな声で“ただいま”って、みんなのところへ元気に帰れるまで…あと少し、一緒に頑張ろうな。

それまで、存分に甘えてくれていいからさ。