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【樹】
目の前でスースーかわいい寝息立てて眠る息子は、5年生になって急に背が伸びて少し大人っぽくなってきたとはいえ、まだまだ小さな子ども。
まだ少し赤く乾燥した頬には、涙の跡。
佐久間「あ、北斗寝てるー？」
青「あぁ、佐久間くん。…さっき、ようやく。あっ…ごはん…」
佐久間「あぁ〜、全然いいよ。あとで食べれるように、取っておくから。また起きたら教えて？」
青「すんません、お手数おかけして…」
佐久間「も〜、謝んないの。そんなの、よくあることなんだから」
でも…といつまでも口の止まらない俺を、無理に止めて笑う佐久間くん。
その笑いは、“参ってるね”っていう苦笑いだけど。
そっと北斗の頬の涙を拭ってくれる佐久間くんの横顔は、なんだか言葉にできない表情だった。
佐久間「結構泣いたんだって？」
青「もっと、回復すると思ったみたいです。期待、煽りすぎたかなって…」
佐久間「ハハッ。まぁ〜…これから、だけどね。挙げ句、こんな風に熱出ちゃったし…悔しかったのかな…。ごめんね、俺らもうまくサポートしきれなくて」
青「いやいや、全然…」
術後に始まった、北斗のリハビリ。
なんだけど…本当に、少しずつ、少しずつの進み具合。
一歩一歩進まないとっていうのは、俺たち大人からしたらある程度当たり前だけど、手術を受ければ心臓が良くなるもんだと思ってた北斗からしたら、そのリハビリのスピード感にはだいぶもどかしさを抱えてるみたいで。
とはいえ、いざリハビリが始まってみれば、そんなスピードにすらついてこない体。
もどかしさを感じるものが、北斗にとってはあまりに多すぎたんだろう。
青「期待と、現実のキャパが…色々、バランス取れなかったんだと思います」
佐久間「そんな感じだねぇ。…ちょっと、舘先生にも相談しておくね」
青「ありがとうございます…。ま、地道に向き合うしかないですよね」
幸い、時間はある。
兄貴や師匠、あべべ…何より、Aが本当によく頑張ってくれてるから。
そんな頑張りに甘えてばかりはいられないけど、せめて今は、今くらいは…北斗に、全てをかけてでも向き合ってやりたかった。
黒「ん…っ」
青「ん、ここだよ」
寝たまま俺の手探すなんて…そんな北斗の精一杯の甘え、受け止めてやりたいもん。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年11月30日 20時
