. ページ50
【北斗】
初めこそ、手探りの会話でお互いを丁寧に、繊細に掴もうとしていた。
胸が高鳴るほどのこんなチャンス…些細ななにかで壊したくなど、なかった。
でも、いつの間に互いの病状や、今ここにいるわけ…体のことから、通っている大学や、家族のこと…それに、将来の夢…話は、尽きなくなっていた。
黒「ははっ、分かるわぁ〜」
七五三掛「でしょう？もうさ、もうちょっと世の中…優しくしてくれてもいいじゃん！って思うけど…いざ、優しくされると素直になれなくてさ…」
黒「強がりたいんだよね。俺らって、わがまま」
期待をしながらも緊張していたのはからも同じだったようで、つい数時間前までは、こんなにもお互いに話す姿なんて夢にも思わなかったのも。
ただ、嬉しかった。
どんな些細なことも、何も考えずとも口にし、共有して…分かり合える、そんなことが。
黒「俺さ、自分のことマイナーだなぁって…時々思ってたんだ。てか、本当に最近。ちょうど、今日の検査と…今度また、入院するんだけど。その話、聞いた時」
七五三掛「…俺も。こんな風に…急にさ。日常が崩れるとか…きっと、一生そんなの感じない人の方が…多いんだろうなって。それに…機械と、生きていくのも…」
黒「ペースメーカー…？」
七五三掛「そ。…迷ってたけど、迷えなくなった」
お互い、病気は少し違う俺たち。
でも…だからこそ、全く同じじゃないからこそ…互いを尊敬し、励まし合うには…なんて、そんなくさいことで胸がいっぱいになった。
七五三掛「あ、なんで北斗が泣くの〜？」
黒「えっ…」
七五三掛「ふふっ。泣いてるよ、北斗」
黒「…ははっ。なんの、涙かなぁ」
胸がいっぱいで…言葉にならない感情が、溢れたんだ。
涙として。
本当は、こうやって誰かと病気のこと…嫌なことも、苦しいことも、些細なもどかしさも…思いっきり、分かりあいたかった。
うちには妹がいるけど…妹だって一緒に闘う心強い仲間ではあるけれど…同年代の、戦友のような彼との出会いは、やっぱりどこか違っていたんだ。
黒「…幸せ、なんだ。きっと」
七五三掛「えー？…なんだそれ」
クスクスと静かに笑いながら、“でも、わかる”って言った彼の声が、いつまでも耳に残っていた。
俺たちは、今日から…これから、先も。
-Fin-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 428人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かん。(プロフ) - 真奈、さん» 申請いただきありがとうございます。リクエストに関しては全て対応をしている認識です。ご確認をいただけますと幸いです。作品を好きになっていただき、ありがとうございます☺︎今後とも、よろしくお願いいたします！ (12月1日 11時) (
レス) id: 6c35b9b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
真奈、(プロフ) - ご連絡ありがとうございますPrivatterでのフォロワーのみだったんですね…。逆に今からフォロしても承認されれば読むことは可能ですか？ 勝手ながら、早速フォローさせてもらいました。確認いただけると助かります、 (11月30日 23時) (レス) id: 300884fa2c (このIDを非表示/違反報告)
かん。(プロフ) - 真奈、さん» なお、本編については全てPrivatterでフォロワー限定公開をしており、他の方もそちらでお楽しみいただいております。わざわざ、このために新たなアカウントを作成いただいた方も多数おられる中の個別対応は公平ではないと思いますので、ご理解いただけますと幸いです。 (11月30日 7時) (レス) id: 6c35b9b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
かん。(プロフ) - 真奈、さん» コメントありがとうございます。本編に関しては皆さま統一のルールのもとパスワードは一切公開しないことをお伝えさせていただいておりますので、個別であってもパスワードはお伝えいたしかねます。申し訳ありません。 (11月30日 7時) (レス) id: 6c35b9b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
真奈、(プロフ) - いつも楽しみに読んでます。本編をまた最初から読みたくなってしまいました。こちらに書くのは大変申し訳ないのですが…。もしよろしければパスワードをメッセージ等でいただけると嬉しいです。ご検討お願いします。 (11月30日 0時) (レス) id: 300884fa2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2023年8月20日 22時
