93話 ページ43
どうしても、入院をしてしまう前に一度、寮に帰りたかった。
これからしばらく、ようやく掴んだ居場所であるその場所には、帰れなくなるから。
もしかすると、ずっと…。
だからせめて最後の夜くらい、大好きなみんなと過ごしていたかった。
大好きなみんなと、きちんと時間を過ごしたくて、こんなのわがままだって分かってるけど、絶対に後悔なんてしたくないから、無理を言って許可をもらって、帰ってきた。
勇人「明日、迎えに来るな。荷物、自分で必要なもんは用意しときや？」
「うん…」
勇人「だぁいじょぶや。絶対また、ここに戻ってこれるから」
勇人兄ちゃんは、どこまでも優しかった。
病院で先生に現実を突きつけられて、その瞬間、頭が真っ白になった。
頭が真っ白になって、なにも考えられなくなったまま、取り乱して、泣きわめいて、声が枯れるまで叫んだ。
それでも、もう私の左脚は残せない。
どうして違和感を覚えたあの時、すぐに誰かに言わなかったんだろう。
検診の時に、少しでも違和感があることを先生に言えばよかった。
痛みが出たとき、なんとなくうまく足が動いてくれないと感じたあの時、ちゃんとみんなを頼ればよかった…。
今更そんなことをどれだけ後悔したって、もう遅かった。
でも、私は…あの時の私は、みんなといたかった。
一緒にいたくて、そんな自分の感情を優先して…。
「亜嵐さん…あの…私に、少しでいいから…時間をください…」
そう言えば、すぐに寮生のみんなを食堂に集めてくれた亜嵐さん。
同期も、先輩も、そして、まだ出会って1ヶ月の1年生も、みんながすぐに集まってくれた。
みんなが席についたのを見て、今回全てを包み隠さず話そうと決めた。
「監督から聞いたと思いますが……がんが、再発していました…。明日から、入院します…」
ただそれだけ言っただけなのに、涙が溢れてきた。
夏の大会には間に合わないこと。
左脚を切断しなくてはいけないこと。
先輩たちの卒業さえ見送れないかもしれないこと。
全部全部、話したら徐々に現実味を帯びてしまうのが怖くて、苦しくて、涙が次々に溢れた。
そんなぐちゃぐちゃで汚い言葉を、みんな黙って、真剣に聞いてくれた。
同期が、真っ赤な目をしたまま、真っ直ぐに私を見守ってくれていた。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
