88話 ページ38
“ちょっとお話したいことあるから、このあとの時間、お兄さんも一緒に…”
2月の検診も、3月の検診も、何もなかった。
違う…正確には、見つからなかったんだ…。
でも、先生が深刻な顔でそう言うことに対して、それなりに心当たりはあった。
あったから、先生のその言葉で、察したくもないのに、全てを察してしまったの。
「お願い…。お兄ちゃん…出て……」
お兄ちゃんが仕事中なのも、なんなら東京にいないこともわかってるけど、頭はもうパンクをしかけていて、どこかそれを理解していない自分がいる。
何度も何度も、虚しく一定のリズムで響くコール音だけが耳に伝わってきて、その無機質に繰り返される音に、余計に不安が煽られる。
なんで今日に限って、1人で来ちゃったんだろう…。
どうしても外せない取材があるから送り迎えしかできないって勇人兄ちゃんに言われて、もうだいぶ慣れてるから一人で大丈夫！なんて自信満々に言った自分に腹が立つ。
お兄ちゃんに繋がらない電話が怖くて、終わったら迎えに行くから連絡をするようにと言われていた勇人兄ちゃんに電話をかけた。
「ねぇ…お願い…出て……。勇人兄ちゃん…っ」
何度コールが鳴っただろう。
何度も何度もかけ直して、何度目かの留守電の機械音が聞こえそうだった時。
プツリと途切れたコール音。
勇人「ごめんごめん！全然出れんかった。え、てかなに。めっちゃ電話かけてくるやん！メールでもよかったのに」
いつも通りの、優しい勇人兄ちゃんの声がした。
そんな兄ちゃんの声に安心したのか、それともいつも通りすぎる声と、これから突きつけられるであろう現実のギャップに余計不安になったのか、何の感情かわからないけど心いっぱいによく分からないものが広まって…。
いま自分がいるのが、人に溢れた病院だってことも気にできなかった。
「勇人兄ちゃん……っ………助けてっ…！」
電話越しの私のあまりに普段と違いすぎる様子に、ただ事ではないと思ったのか、急に焦りだす勇人兄ちゃんの様子が伝わってきた。
さっきまでの、ゆったりした声は消えていた。
“絶対電話切るなよ！”と、それだけ言い残して遠くなる勇人兄ちゃんの声。
声の代わりに、電話越しに車を出す音が聞こえてきて、ほんの少しだけ安心した。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
