85話 ページ35
【片寄】
冬練は、キツい。
夏とはまた違った、地味な辛さ。
実戦からは少し離れているこの期間、もう一度感覚を掴むその時まで繰り返して体を作って、力を貯めるための、そんなハードさ。
「前半終了でーす！後半入れ替えて〜、5・4・3・2・1…スタート！」
片寄「あ゛ぁーっ！」
「はい、すぐ次だからー！ほーら、準備！止めない！」
トレーニングに、基礎練習。
地味だ…地味で、地道だ。
でも、あのキツすぎた3週間弱の冬合宿を超えているからか、不思議と自分自身がひとつたくましくなった気はしてたし、耐えられないとも思わなかった。
周りを見れば、ヘロヘロになってる佐野や、追い込みをかける数原。
一回りデカくなった、いつものメンバーがいる。
一人じゃしんどい思いするしかなくても、周りがいれば乗り越えられることを、あの冬合宿で痛いほどに実感したから、周りを見るとそう思えるのかもしれない。
「終了〜！グラウンド10分後でーす、1年生片付けもお願いします〜」
よく通る声で指示を残して、あとは任せたと言うようにこちらを向き、捕食を作るため食堂に消えるAも半年前とは随分違ってみえる。
もはや、野球部の小さなお母ちゃんになりつつある。
あれでも1年前までは俺たちでは到底手の届かない、そんな世界に身を置いているキラキラした存在だったのに…なんて思うと、ちょっとだけ不思議な感じがする。
亜嵐「A、ほんとに頼もしくなったよな。なんか、年明けてからすごく変わった気もするし。監督も安心して任せてるもんな」
片寄「ですよね。すっかりマネージャーが板についてるっていうか、上手く言えないけど、めちゃくちゃ頼もしいです。いてくれないと、困る」
亜嵐「あいつがいるから、余計に強くなれる気がするんだよね。お前たちも、俺たちも。あいつのために、とか思えるし、それに…負けてらんないなって」
亜嵐さんとそんな話をしながら、次の練習に向けてグラウンドに向かっているとき、視界の端で少しだけ見えてしまった。
というか、気づいてしまったんだ。
なんとなく、歩き方がぎこちなくて、時々庇うように左足を引くAの姿。
でも、強くなりきれなかった俺は、そんなAの姿を見ても、“気のせいだ”と…ただ、思い込むことしかできなかった。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
