76話 ページ26
ついにきた、地獄の冬合宿最終日。
まだ朝は早いけど、最後の一日を見届けようと、これが本当に最後の1日になる先輩たちのお母さんをはじめ、何人かの選手の保護者がスタンドにいる。
もしかして…なんて思って一応見渡してみるけど、そんな期待は淡く散って、勇人兄ちゃんはいない。
最後の一日だろうと、やることは変わらない。
いつもと少し雰囲気は違うけれど、それを考えさせないくらいに、いつも通り始まる練習。
「佐野、頑張れ！まだいけるよ！片寄、もう一周！もう一周行こうっ！」
合宿が始まってから、今日まで毎日見てきたみんなの、気づいたらどんどん顔つきの変わっていった凛々しい表情。
歯を食いしばって、苦しそうに、最大限きついメニューの一つひとつをこなしながら、私の声に耳を傾けて、それに答えてくれるみんな。
確実に、合宿が始まった頃とは違うみんなの表情が、どこまでも誇らしかった。
そんなみんなの表情があまりにカッコよくて…不意に、必死にレッスンに食らいつくJr.のみんなの表情、そして、最後に出たSUMMERYを思い出して涙が出そうになった。
「室内行くよー…っ」
泣いたせいかな、急に立ち上がったせいかな、少し自分の重心が崩れて、クラっとした。
必死に隠したから大丈夫だと思うけど、あ、ヤバい…なんて。
2週間半というか、3週間弱、必死に食らいついたのは選手だけじゃなくて、私もそうできたのだろうか。
勇人「A！」
「あ…兄ちゃん…」
昼食に向かおうとすると、兄ちゃんの姿があった。
正直心も体も限界まで疲れ切ってたけど、久しぶりに会えた兄に、そんな姿は見せたくなかった…が、生まれた時から私を見ている兄に、隠し通せるわけもなく。
勇人「お前…そんなんで飯、食えそうか？」
「うん…」
勇人「ははっ！ま、えぇわ。あと半日やろ？なら頑張ってこい。帰りの車でどんだけ寝てもええから」
やっぱり、この人には敵わない。
3年間の寮生活も、その先も、この人はもう何年も前にすでに経験している。
芸能界に復帰した時に、なにか武器になるものを…。
そんなの私にとってはただの口実で、理由のひとつでしかない。
追いつきたかった、この人の背中に。
だから野球部に入った。
だから、いま叶えたい夢は、ここにあるんだと思う。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
