75話 ページ25
【大樹】
あと半分。
数える数字がひとつずつ減るたび、もう少し、あと少しと自分の成長スピードを、目標地点を見据えて、毎日を過ごしていた。
去年も、同じように毎日毎日、日々過ぎていく時間にそう思ってワクワクしたことを思い出す。
一年前の俺は、今と比べたら全然力もなくて、冬合宿の噂を聞いては嫌で嫌で仕方がなかった。
とにかく地獄としか感じられないのに、でもなぜだかそこには満足感さえあって、正直不思議な感覚。
振り返れば、やっぱりしんどかったんだけど。
当時新キャプテンになった今市さんや、教育係だった世界さんが毎日のように話を聞いてくれて、背中を押してくれて、なんとか乗り切った。
大樹「A」
「あ、大樹さん。お疲れ様です」
大樹「毎日ありがとな、準備も後片付けも」
「だって、毎日みんなが一生懸命に朝から晩まで歯食いしばって頑張ってるんで。みんなと同じことはもちろんできないけど…その分、私は、私のやることをします」
俺たちスポーツ選抜の選手たちとは違って、普通科に通うAだから、きっと野球部に入らなければこんな生活をすることもなかったのに。
でもそう言うと、彼女は“どうせ元々は、普通の学生生活送る予定なんてなかったから”って言う。
ときに悔しさを滲ませながら。
それがわかってるから、飲み込んだ言葉。
大樹「寮監に、昔の試合の動画送ってもらったんだって？お前、空いた時間部屋にこもってると思ったら、ずっとビデオ見てんだろ？」
「寮監のおしゃべり…」
大樹「毎日そのビデオ見ながら、スコアつける練習してんだってな。よくやるわ。…なぁ、A？お前はきっと、葉月さんも超えるマネージャーになれるよ」
「スコアつける練習してるの…みんなには、絶対内緒ですよ？恥ずかしいから」
大樹「ん。あ、でも！夜更かしだけはすんなよ」
どこまでも勉強熱心で、ものすごく気遣い。
きっと、こいつが生きてきた世界では、そうするしかなかったんだろうけど…。
時々、危なっかしくて心配になる。
でも俺は、先輩たちみたいに上手く後輩に声をかけてやることもできないから、こんな言い方しかしてやれない。
「大樹さんに声かけてもらえると、安心します」
だからお前がそう言ってくれたことは、めちゃくちゃ嬉しかった。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
