72話 ページ22
【片寄】
「ラスト一本〜！はい、お疲れ！」
片寄「お前、マジで元気やな…。よぉ、やるわ…」
「ふふっ。まぁ、みんなとはしんどさの角度もちゃうからな。それに、グラウンドにおる時は…野球のことだけ考えてたらいいから」
片寄「なんか、悩んでるん？…もしなんかあったんやったら、あとで聞いたるよ」
どことなく、普段と少し違って見える最近のA。
だからことあるごとに気にはかけてるけど、こう言ったってAが首を横に振ることはわかっていた。
それでも今は、そんな言葉しか かけてやれない。
玲於からあの休日の話は聞いてたから、これがただの感覚的なものではなくて、Aの中になんとなく引っかかってることがあるんだろうってのは、俺もわかってた。
でも、過去のAのことはわからないし、今Aの仲間がどんな想いを抱えているのかもわからない。
片寄「ま、ええよ。わかってると思うけど、お前の居場所はここにもあるんやし。今は、野球のことだけ考えてて、それで楽しいなら、俺はそれでええと思うで」
「ふふっ。ん…それは痛いくらい感じてんで。私は、ここにおることを選んだ。だから今は、ここにいることを、全力で楽しむだけでええんかなって」
片寄「ん。そうだよ、それでいいんだよ」
「なんかな…ほんまは、人のこと考えてる余裕なんてなくてさ。…自分のことで、精一杯やねん」
片寄「うん」
それで、いいんびゃない？って、そう伝えれば、Aは驚きながらも、戸惑いながらも、笑っていた。
Aは、誰よりも周りに目を配るやつだから、きっとこれまでもそうしてきたんだろう。
マネージャーとして、俺たちのことをそうやって見てくれてるのは、ものすごく助かってる。
でも、そんな性格はきっといつか、Aを苦しめてしまう気がして、壊れてしまう気がして…なんとなく、そんな未来が来るかもしれないのが、怖かったから。
“精一杯”というその言葉を、本人から聞けた事に、俺はどこか安心をしていた。
佐野「アイツ、なんか言ってた？」
片寄「練習しろってさ」
佐野「…そっか」
1人で抱え込むなって言ったって、きっとあいつは無理をするんだと思う。
それなら俺は、あいつが壊れないように、しっかり仲間としてやっていけばいい。
と、思っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
