71話 ページ21
【佐野】
佐野「ようやくきた…。マジで幸せ…。最高だわ…」
合宿が始まって以来の初めての幸せな日。
そう、中休み。
5時過ぎに、同室である中務さんのケータイから大音量でロックミュージックが鳴ることもなければ、Aにギャンギャンと次のメニューを叫ばれることも…。
「…いつまで寝とん」
佐野「休みくらい…休ませてくれ…」
「いや、ノート返しにきただけ。あれ、中務さんは？」
佐野「知らん……」
「ほな、このノート佐野に渡しとくし。中務さん帰ってきたら渡しといてな？」
佐野「はいはーい…その辺に置いといて」
頭使わずにとりあえず受け答えしてるだけのこの会話さえも、夢か現実かは定かではない。
この1週間、朝は大音量の音楽で5時に目を覚まし、とにかく味噌汁だとかあったかいお茶を体に流し込んで、体だけはあっためてまだ暗く寒いグラウンドへ行く。
日の出を待つかのようにランニングを始め、サーキットの回数を必死に考え、ようやく日の出を迎えた頃にはまた走って…。
とにかく目の前をこなす事にいっぱいいっぱいな毎日だったけど、ひとまず1クール終えて、まだ生きてる。
佐野「なぁ、A…。お前さ…こんな毎日送るって、想像してたか？」
「え？」
佐野「ここに入る前」
「んー？」
佐野「マネージャーなるって決めて、寮入って…朝から晩まで野球漬けって、想像したか？」
Aはそんな俺の寝ぼけた、とぼけた質問になんて返すか迷っているのか、俺たちの間に流れる少しの沈黙。
どうやろなぁ〜って、初めこそ少しはぐらかそうとしていたAだったけど、やっぱり少し考えて、口を開いて。
「いや、振り返ったけど…。そりゃ、考えてたわけないやん。私、一年前とか入院してたんやで？それに、一年半前なんて、別の高校に行く予定やったし。それまでは学校生活と並行して芸能活動してた」
そんなやつが、こんな生活送ってるなんて想像してたわけないでしょって笑うAは、いつもと少し違った。
いつも明るくて、なんだって跳ね返すほどに強さを背負ったAは、声こそ明るく、言葉こそいつも通りだけど、どこか寂しそうな、珍しく迷った目をしていた。
ちょうど、俺らが初めて分裂して、どうしようもない衝突を繰り返してた入寮してすぐの頃のようだった。
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かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
