51話 ページ1
【勇人】
「勇人兄ちゃーん！」
普段はなかなか会うこともできない妹だけど、せめてもと思い、定期通院の時は、送迎も含めてなるべく俺が一緒に行くようにしてる。
当の本人は、少しずつ病気との付き合い方にも慣れてきたみたいで、学校を休んでまで病院へ行くのは嫌だと言い張るが、こればかりは仕方ないことで。
俺にとっては、離れて暮らす妹と唯一しっかり時間の取れる日で、俺もこんな仕事してるわけだから、本来ならあるはずのない貴重な時間だったりする。
勇人「最近は？体調、ええのん？」
「んー？まぁボチボチやな〜」
勇人「なぁー、ケータイばっか見とんなって。ちゃんと話そうや…」
思春期の妹は、兄の気持ちなんてお構いなしだ。
毎月こんな感じだけど、それはそれであり。
とにかく今は、Aと一緒に時間を過ごせるそのことさえもかけがえのない時間で、そっけない返事しか返って来ない妹との会話だって、嬉しかった。
「…季節のせいなんかなぁ。よくわからんけど、疲れると副作用出る感じする」
勇人「ふーん。それ監督さんに言うてる？」
「うん、みんなにも言うてある」
勇人「耐えれんことはない？」
「耐えれんことはないよ、そりゃ」
俺の質問に軽く返事をして、もうそっからはイヤホンしてるから俺の話なんて無視だけど、うまくやってるみたいでなにより。
維持療法を続けながらの、“普通”とは言えないのかもしれない高校生活。
正直、治療を続けながらの今のAにとっては、最低限の高校生活を送ることさえ大変な状況のに、それに加えて強豪野球部での寮生活。
心配はしてたけど、周りの助けもあって副作用ともそれなりにうまく付き合えてるのは、それだけ頑張ってる証拠。
がんばりすぎて心配になるのは、ジャニーズJr.としてハードな毎日を過ごしていたあの頃から変わらないけど、それでも踏ん張り続けるAを、兄としては誇りに思う。
勇人「着いたで」
「ん、あんがと」
勇人「あーちょ、マスク！」
「んー？あぁ…」
小さい頃みたいに多くは話さないから、事細かに妹のことを把握しきれてるわけではないけど、顔つきの変わりようでわかる。
寮生活で、部活を通して、確実にこいつは今まで以上に成長をしてる。
それは、ジャニーズJr.としての成長にも勝るほど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かん。(プロフ) - 美紀さん» コメントありがとうございます！2nd seasonもよろしくお願いします(^^) (2020年5月5日 13時) (
レス) id: bd45e6ad2b (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでとです最高ですコロナウイルス流行ってるので気を付けてくださいね (2020年5月5日 12時) (レス) id: 8204dae0fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2020年4月23日 22時
