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【優吾】
「…ﾊｧ」
黄「…しゃーない。な？」
刻一刻と迫る、病院へ帰る時間。
時間的にはそろそろ病院へ向かわないと間に合わなくて、Aもそれを察してるから、どことなく大人しくなってきてる。
本人だって、仕方のないことだってくらい分かってんだろうけど。
俺だって、やっぱりちょっと寂しくて、苦しくて…今この時間が、ずっと続いてくれたらいいのになって、そんなことばっかりが頭に浮かぶ。
黄「…最後さ、アイツらに会って帰らない？」
「アイツ…ら？」
黄「あー…。風磨とか？遊んでんだって、風磨と、樹と…あと慎太郎？よかったらおいでって、声かけてくれてるけど」
「ふふっ…。仲良いんだね。でも…んー…」
黄「一応さ、昨日の…ね？アレも、あるしさ」
「ん、そだね。ちゃんとお礼は言わないとだからね」
迷ったときは、助け舟。
何をいうでもなく、たぶんチビの時からそれが俺たちの阿吽の呼吸だった。
黄「アイツらは、大丈夫と思うよ」
「風磨は、分かるよ。あの子は、なんか…デビューしてるってのもあるんだろうけど、なんか…違うの」
黄「うん、俺もそう思う」
「でも、優ちゃんも…変わった。変わってた。変わってたけど、気づかなかった。避けてたから。見ないように、してたから」
黄「ハハッ！なんだよ。お前やっぱ避けてたのかよ、俺のこと」
「避けてたっていうか、まぁ。うん、避けてた、しか言葉見つからないもん。病気のことも、あったし。けど、一番は…」
“優ちゃんが、遠くに行っちゃうみたいで、怖かった”
あーあ…。
なんで、今日はこんなにも素直かな。
危うくハンドル操作トチリそうだから、やめてほしい。
「…なんか言ってよ」
黄「なんか言えること言ってよ」
「ふふっ。なにそれ」
黄「俺さ、そんなに違った？そのー…アイドル、してる時の、俺」
そんな突拍子もないこと聞けば、少し悩んで、Aは笑った。
ただ笑って、“結局どっちの優ちゃんも、大好きだった”って、俺の質問に対する答えなのかもよく分からない、そんな答えを返した。
その答えをはっきり聞けないまま、風磨たちんとこ顔出して、思ったより笑顔の見られたAに、その答えなんて別にどっちだって良くなった。
Aはまた、白い檻…闘いの場に、戻っていった。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
