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【優吾】
思い出の場所をあとにして地元方面に車を走らせれば、少しずつ2人で見慣れた景色に移り変わる窓の外。
しばらく会えなかった数ヶ月を埋めるみたいに、道中はわけわかんないくらいに、ずーっと話してた。
よくもまぁ、こんなに話が尽きないなって思ったけど、思い返せばAと一緒にいて、話が尽きるだとか、間違っても沈黙が続いて気まずくなることなんて、一度もなかった。
他の女の子なら…こうはいかないんだろうなぁ、なんて。
「…なにぃ？」
黄「ん？別になんもねぇよ」
「えー？なんか考えてた。私の顔見て」
黄「そりゃ考えはするさ」
「ねぇ、なにをー？」
黄「うーるさい。車狭いんだから、声の大きさ考えてってば」
「ふふっ…」
黄「なんだよ」
「んーん。なんか…ふふっ。なんかさ。すっごくいつも通りすぎて…すっごく、幸せ」
Aは、思ったことがすぐに口に出るやつだった。
表情にもすぐに出るし、サプライズなんて、成功した試しがないくらいに、隠し事のできないやつだった。
そのくせ、肝心なことは言葉にできずに抱え込むばっかりで、今回みたいに弾けるまで自分でさえ気づかない鈍感なやつで…。
そんなAが、ぽろっと出した“幸せ”って言葉。
いつも通りすぎて、幸せ…だなんて。
「ちょ〜、泣かないでよ」
黄「泣いてねぇよ、ばーか」
「もー！すぐバカって言う！バカって言った方がバカだ」
黄「うるせぇ、ガキか。ほんと、小学生からなんも変わってねぇじゃん！つかな！もう、それ以上変わんな！変に派手なメイクしたってな、お前はお前なんだよ！」
「え、なに、急に」
急にトンチンカンなこと言い出す俺を、ケラケラ笑って、そこまで言ったなら、他にも言いたいこと溜まってんでしょ？って、一枚上手のような顔して。
そこまでされたら、もう俺の負けでいいやって。
黄「お前は、お前。俺も、俺」
「ふふっ。ん、わかってる」
黄「お前は、ガキのまんまだし、俺も、ガキのまんま」
「はい。おっしゃる、通りです」
黄「この街にいた頃と…なんも、変わんねえから」
「それも、分かりました」
黄「真面目に…」
「聞いてるよ、真面目に。いたって、真面目」
なら…この街にいた頃と変わらず、お前のことが、ずっと好きだって言っても…許される？
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
