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【優吾】
“優ちゃんのこと、独り占めしたい”
好きな女にそんなこと言われて、ときめかない男がいるだろうか。
俺だって、そりゃね。
「え〜、こんなとこで遊んでたんだ」
黄「いや、遊んでたってか…まぁ、遊んでたか。撮影終わりとかさ、あいつらとここ来て、足湯回って…。あぁ、映画んときは打ち上げでバーベキューもしたわ」
「ふふっ。なんかさ、アレだね。全然うちらと変わんないっていうか…普通に高校生だし、大学生だね、みんなも」
黄「まぁ、慎太郎は俺らに合わせてっから若干マセてるかもしんないけど」
「てか…男ばっかで来てんの？」
黄「…うるせぇ、悪いか」
「んーん！全然っ！健全だなぁって」
別に男女が何人かで来てたって健全だろうと思うけど、それはAの語彙力的な問題のようである。
6人で来たり、それ以外の仲良い奴らできたり、先輩たちと来たり…あの頃のことを思い出せば、やっぱり、俺が少しでもこの世界に本気になれたのは、あいつらのおかげだったんだなって思ってしまうんだ。
Aが、一生懸命だったと喜んでくれたあのステージだって、アイツらと立った、最後のステージだった。
「…みんなで来てた時、楽しかった？」
黄「んー？んー…だね、すげぇ…楽しかった」
「そっか」
黄「なんも考えてなかったんだよ、アイツらといる時。自分たちが、芸能界に片足？突っ込んで輝いた世界にいるってことも、兄貴がどうとか、親がどうとか、先輩がどうとか、レギュラーが…とか、なーんも」
「うん…」
黄「それが、すっげぇ楽しかった。コイツらとなら、中途半端にぶら下がってたこの世界も、もっと楽しめんのかなって。でも多分、お前と一緒。神様からしたら、“今更”だったんだろうな…」
ちゃぷん、ちゃぷんと足元で聞こえてた音が止まる。
クスッと笑ったAは“ほんと、タイミング悪いよね”って。
「もうちょっと、待ってくれてもいいのにね」
黄「ほんとだよ…」
「でもさ、A…負けない。ちゃんと、生きるから。神様、呆れてバチ当てたかもしんないけど…Aの、人生だから。神様の、人生じゃないから」
黄「ハハッ！なんだそれ」
「バチ当たり上等だよ」
黄「…ん、それでこそ俺の幼なじみ」
そんなら俺も、この世界でちゃんと生きてみるよ。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
