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もとより神様なんて、存在はしないんだと思う。
存在をしたとしても、優しさのかけらもありませんないんじゃないかと思う。
じゃなきゃ、こんなにも何度も苦しい思いをしなきゃいけないことなんてないはずだ。
“今回のお薬、あんまり効いてないみたいで…”
先生はすごく申し訳なさそうな顔をして、それでも淡々と検査の結果を私に伝えたけど、先生が思っているほどダメージなんてない。
だって、そんなのもう慣れたことだもん。
と、いうのも…嘘かもしれない。
「ねぇねぇ」
菊池「んー？」
「デビューって…そんなに難しいの？」
菊池「…んー、まぁね。難しいよ。実力だけで、どうにかなるもんじゃねえから。運も、タイミングもある。って、デビューしてる俺が言っても…って感じだけど」
「ふーん」
菊池「ハハッ！ねぇ、興味。相変わらず勝手だな〜」
ケタケタ笑いながらも、少し大人な顔をしている風磨くんは、大学生活を目一杯に楽しんでいる社会人。
私の知らない世界を存分に楽しんでいるようで…彼が時々見せる表情は、楽しいだけでいられない毎日を必死に噛み締めているように見えて。
「全然状況も違うのにさ…風磨くんって、なんか同志みたいな気がするんだよね」
菊池「俺が？」
「閉じ込められた檻を、精一杯に楽しんでる感じ」
菊池「だと思ってんなら…」
「でも…。いつか、その檻をぶっ壊してやろうって、常に隙をうかがってギラギラしてる感じ」
菊池「…ふっ。んなら、同志かもね」
こんな檻に居続けてたまるかって思ってる。
抜け出したくて、逃げ出したくて仕方なくて。
神様の思う通りになんて、他人の思う通りになんてなってたまるかって。
「もし、優ちゃんもそう思ってんなら…って、思ったんだよね」
菊池「んなことだろうと思った」
「優ちゃんはそんなこと思うはずないって。…思ってたとしても、きっと私たちとは違う。優ちゃんは、そんな檻関係ないみたいに、どこにいたって優ちゃんで居てくれる。それを、私が信じきれなくなった」
菊池「…で、言っちゃったと」
「でも、優ちゃんなんて言ったと思う？」
菊池「…分かるわけなくね？」
「ふふっ。そだね」
あの時、“舐めんな”って言った優ちゃんを…信じなきゃ、いけない気がしたんだ。
一生をかけて。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
