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【優吾】
“あまりもの”
そんな、ふざけた名前のグループチャット。
そんな、ふざけた名前でも…勢いだけでどうにかなると思っていた現実が、いとも簡単に壊されて。
臆病者だから、どこか予感していたそれが現実になった時から、“あぁ、やっぱりね”なんて。
でも決して悲観的なだけじゃなかったのは、俺だってそうだけど、きっとそれぞれに、何かしら踏ん張らなくちゃいけない理由があったんだと思う。
青「Aちゃんじゃん」
黄「うん、そう。母さんがお見舞い行ったらしい」
青「ずっと入院してんの？あれから」
黄「んー…まぁ、しばらくは退院難しいかな。今度のも、うちの母さん当たってたからどう？って聞いてみたけど、許可降りなかったらしくて」
青「んで、珍しくちょっと�眞呂睛遒噌�んでるわけだ」
黄「落ち込んでるわけじゃ…」
ないとは、言えなかった。
あと何度、チャンスがあるのか分からなかった。
だから、一回でも多く…チャンスがあるんだったら、そのチャンスをAに掴んでほしかった。
黄「…なぁ、今日このあと暇？」
青「ん？…ん、空っぽ」
黄「ちょっと付き合って」
ダルいのなんのと文句言う樹を連れてきた繁華街。
ここが遊び慣れた街の樹なら、どこに何があんのかもよく知ってるだろうからと連れてきたのは、あまりに突然色んなことが起こりすぎて、過ぎ去ってしまった3月のため。
A…19歳の、誕生日。
多分、あいつ本人も眠ってる間に過ぎ去ったから、忘れてるかもな…なんて。
青「んで？なに買うの」
黄「…んー。なんにしようね」
青「決めてねーのかよ」
黄「まぁ〜…そろそろネタ尽きた」
青「ネタとかいうなよ、女の子へのプレゼントだろ。…あぁ、コスメとかは？Aちゃん、ギャルじゃん。メイクとか絶対好きじゃん」
黄「あれ以上ギャルにしてたまるか」
俺はもうちょい攻めても好みよ？なんてニヤニヤしてる樹をふと振り返れば、彼のトレードマークのキャップ。
そういや…もうすぐ、抗がん剤始まるんだっけ…。
黄「帽子」
青「ん？」
黄「おすすめの帽子屋さん、連れてって」
青「…ん、おっけ」
その意味が分かったのか、少しだけ樹は苦しそうな顔をしていたけど。
これから始まる闘いに、せめてこのくらいは支えになれたらさ。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
