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【優吾】
黄「…こっちおいで」
「だーめ」
黄「いいから。…お願い、来て」
それだけ食い下がっても、Aはダメだと言って聞かなかった。
つい数ヶ月前まで、人のベッド半分占領しては半分空いてるだのベッドがいいだの、はたまた床で寝るだとか言ってたやつが、何を今さら…とか思うけど。
Aも、Aなりに。
黄「寝ないから。こっち来て、ここ座って」
俺はソファで寝るからそのままウトウト寝てくれるのが一番よかったけど、どうせAは眠れないだろうし。
ベッドに腰掛け、隣のスペースをトントンと叩けば、少し迷って隣へ来た小さな体。
こんな、細かったかな…。
ちょっとだけ触れる腕なんて、今にも折れそうで。
黄「…痩せた」
「…そんなことない」
黄「痩せたよ。少なくとも、心は痩せ細ってる」
心配だって、ストレートに言えない自分が、随分拗らせた男になってることを実感するしかなくて…少し、恥ずかしい。
心の痩せ細り。
そう言った時、Aの方がピクりと小さく動いた。
自覚あり、ってことだろう。
俺だって心当たりがあるくらいだし。
「ママとパパを…悲しませたく、なかった…」
黄「っ…」
「治ったって分かった時…パパ、すごく安心した顔して…嬉しそうでさ…今でも覚えてる。ママも、よかったぁ…ってさ。その時…“Aが、たくさん心残りがあるままじゃなくてよかった”って言ったんだよ、ママ…」
黄「…そのために、心置きなくやりたいこと全部して、それで…って思ったの？」
「ま…簡単に言えばね。どうせ、そういう運命なら…パパとママ…必要以上に、悲しませたくない…し。私だって」
黄「まぁ〜…なぁ。俺でも、それは…」
Aは、Aなりに考えて、精一杯に生きていた。
精一杯に生きて、俺のステージ見て、そこでの俺を“一生懸命”だと言った。
黄「…あのさ」
「…ん？」
黄「…嬉しかったよ、頼ってくれて。いざってなった時、俺んとこ逃げてきてくれて…すげぇ、安心した。…俺、お前を助けるって…あぁ、幼馴染として。それだけは、何があっても言い張れる。だから…そこは、絶対遠慮すんな」
あれだけ頑なだったAは、この決意だけは本物だって分かってくれた。
小さく頷いたAは、やっぱり…すごく、小さかった。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
