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【優吾】
「ほんとに、ダメかもって思った…」
黄「…そ」
「なんかさ。…よく覚えてないけど、あの日の、前の日かな。なんか、すっごく調子よかったんだよね。めちゃくちゃ体も楽で、下のコンビニまでお散歩なんか行ったりしてさ。あぁ、こんなだったら…逃げ出したあの日も、こんな元気だったら、優ちゃんや風磨…騙せたかなぁなんて、バカなこと考えてさ？ふふっ。アホでしょ…？」
黄「笑ってる場合かって、お前は…」
「そしたらさ…なんか、夜に、なったら…ﾊｧ、急に…苦しくなってさ？それで、気づいたら…んー…もう、覚えて、ないんだよね…ﾊｧｯ…もう、それからは、優ちゃんの方が…知ってる、かもね、ﾊｧ」
黄「…喋りすぎ。息切れてんじゃん」
ペースも考えずにべらべらと喋り続けるもんだから、途中何度か苦しそうに咳き込んだり、思い出したように呼吸整えるA。
話しすぎたら苦しいのか、当たり前のようにシューシュー音を立てていた酸素のチューブを自らマスクに変えるあたり、その慣れた動作が悔しくて。
多分、顔に出てたんだろうな。
なんで優ちゃんがそんな苦しそうな顔すんの？って。
ケタケタ笑ってるAは…やっぱり、強かった。
「優ちゃんも、慎ちゃんも…。なんか、あったんだ」
緑「えっ…なんで…」
「へへっ…。A、エスパー…だから…っ、ﾊｧｯ…ｹﾎｯ」
黄「も〜…。お前、一回喋んのやめろ。どんだけ酸素下げたら気が済むんだよ、ったく…。ん、支えてるからちょっと体起こせ…」
緑「…だいじょぶ、なの？」
黄「ま、このくらいはな。入院する前から時々あったし」
俺もまた、“病気のA”に慣れていた。
“Aの病気”ではなく。
だからこそ、その状態でも自分であろうと必死に生きる姿を見て、その慣れを思い出して、なんとなくだけど…まだ不十分だけど…強さを、もらった気がした。
黄「俺、外された」
「…えっ、なに…」
黄「喋んな。いいから…黙って、聞いてて？」
何がどうなって、なんて詳しい話は仕事のことだからもちろんできないけど、悔しかったり、もう頑張れないって落ち込んだ時には、ずっとそうしてきた。
だから今回も、ここに来たら…答えはなくとも、元気っていうか、もう一度踏ん張るエネルギーがもらえる気がしたんだから。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
