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【風磨】
高校の卒業祝いだとかなんだとか理由をつけて、�眞呂�呼び出してくれて、奢り飯…とは、いかない。
普通に、割り勘。
俺、こいつより先輩だし。
歳は下だけど、初めてのレコーディングも全部俺が教えたんだから。
黄「はい、卒業おめでとう」
菊池「うわぁ、なんか寒っ」
黄「受け取っといた方がいいぞ。それ、Aから」
菊池「え゛っ！？」
黄「あのー…前、病院抜け出した日？あん時に買ってたみたい。俺も知らなかったけど」
菊池「えー…直接渡して欲しかっ…た、は…無理なんだっけ？」
黄「ん、そう」
あの日、Aちゃんが病院から逃げ出した理由。
それを聞いた時に、なんとも言えない気持ちになった。
俺ら、まだハタチにもなってない。
まだ世間的には、法令的には、子どもなのに。
ただの数字に甘えていいのなら、俺たちはまだ守られたって…いや、護られたっていい立場の人間なわけで。
それなのに、容赦なく現実として突きつけられる、揺るぎない数字。
そんなものを前に、恐れずになどいられるわけがない。
もしくは…遠い、遠い世界の話だと、こんなものが現実なはずがないと、自分ごとではないように捉えるかもしれない。
菊池「連絡取ってんの？」
黄「ん。お前に強制連行されたあの頃よりは、まともに連絡取ってるよ。なんか、ほとんど連絡の中身、どうでもいいことばっかだけどさ」
菊池「ふふっ。かまちょだからな、Aちゃん」
黄「よくご存知で」
そりゃそうよ。
無意識だったけど、俺だって彼女のこと、お前ほどじゃないにしても、想ってたらしいんだから。
黄「連絡くれんだよ」
菊池「んぁ？」
黄「テレビ、出ると。ドラマとか、そんな大それたもんじゃない。今までと同じ。少クラとか…適当にやってたら、いつの間にか埋もれちゃいそうなのばっかだけど…。見たら、連絡くれる」
菊池「ふはっ！かわい」
黄「なんか、嬉しくて。誰のために頑張っていいか分かんなかったし…。多分、お前らとか、アイツらの力なしにあのままやってたら、埋もれてたと思う」
菊池「今は違うんだ」
俺の問いかけに、“ちょっとだけ”って自信なさげな�眞呂世辰燭韻鼻帖�
お前は、埋もれないよ。
黄「俺、誰かのために頑張る方が…向いてる」
それが分かってんなら。
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作者名：かん。
| 作成日時：2023年6月12日 19時
