どんな明日も… (ページ8)

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【優吾】

ドラマの撮影が始まって2ヶ月。

やっぱり歯車は、俺たちの知らないうちに潤滑に回りまくっていて、ドラマに出演するだけでも凄いことだと思っていたのに、映画化まで発表された。

“バカレア組”と呼ばれるようになった俺たちは、ますます勢いを増していて、それなりの立ち位置を確立していた。

黄「おーい、やめろよ慎太郎〜」

緑「え、だってヤバくね！？ねぇ、ヤバいよね樹！」

青「いーや、それは慎ちゃん良くないわ」

赤「あ、ねぇねぇ！来月もこのメンツで曲入ってる。え、どうする？なんか面白いことしたくない？」

一人が面白いことしたがれば、他の五人が面白がって乗っかって。

俺以外の五人がまだ現役の中高生だったこともあって、六人集まれば、それがドラマの現場だろうと、雑誌の取材だろうが、さながら高校時代の部室みたいなノリ。

初めこそ、ほとんど話したことないメンバーもいたからぎこちなさはあったけど、2ヶ月も3ヶ月もほとんど現場を共にしていれば、俺たちはかなり深い仲になっていた。

黄「おっ…。悪りぃ、ちょっと電話」

青「え、なに！髙地、女の子ー？」

黄「女だけど、幼なじみだよ。残念でした〜」

Aの存在を知っているのは、まだ上京する前に何度かうちに泊まっていた北斗だけ。

年頃の男子の集まりだ。

バレればめんどくさいことになりかねないし、ふざけちゃいるけど、ほとんどが幼い頃からこの世界に身を置いてるやつばかりで、それなりに一線は引いている。

Aとはやましいことなんて何一つないけど、そこに何故か少しだけ慎重さを持っていた俺。

黒「…Aちゃん？」

黄「うん、そ。今日、定期通院の日だったからさ…その連絡。いつもと一緒」

黒「相変わらず、髙地は一途だね」

黄「だーかーら、そういうんじゃない」

黒「はいはい。ただの過保護ね、過保護」

そもそもアイツは、最近バイト先の男の子といい感じらしいし、それこそサークルにも入ったみたいで、そっちは不足していないらしい。

俺としてはほんの少しジェラシーだけど、ドラマがこうして好調で、今までは本当にどうでもよかった仕事が、コイツらのおかげで少し楽しめてる今、あまり興味はない。

ただ、Aに関してはいまを楽しんでいるのが見ていられたら、それで十分だった。