6 ページ6
【優吾】
「優ちゃん！」
黄「あ？」
「写真…オッケー？」
黄「…ハハッ、オッケーに決まってんじゃん。てかどうせ家帰ったら撮るんじゃねぇの？」
幼稚園の時も、小学校も、中学校も、それに高校生になった時だって、入学式も卒業式も、なんなら行事ごとに二人で写真撮るのなんて当たり前だった。
ケータイで簡単に写真が撮れるようになっても、Aは行事の時だけはカメラで撮る写真にこだわってたっけ。
「最後かぁ…」
黄「ん？あぁ…だな」
この18年、Aがそばにいないことなんてなかった。
ずっとずっと隣にいて、当たり前に同じ学校に通って、当たり前に1番信頼できる、幼なじみ、親友なんてそんな簡単な言葉じゃ片付けられないやつ。
黄「大学、通えそう？」
「…そんな子どもじゃないから」
黄「そうじゃないでしょ。…分かってんだろ、俺がなに言いたいか」
「ふふっ。ごめん、分かってる。けど…ほんと、大丈夫だから。心配しないで？」
彼氏にフラれる前後くらいから、Aの体調は長い間安定しないままだった。
昔みたいに長期の入院をしたりすることはなかったけど、心配性で、(A曰く)過保護な俺からすれば、やっぱりいつかそうなるんじゃないかと心配で。
当の本人は、“ま、こんな時もありますよ”なんでケロッとしてるから大丈夫なんだろうけど。
「4月から…いないんだね、優ちゃん」
黄「えー？」
「あー…自立しなきゃなぁ〜…」
黄「ハハッ、大学違うだけで大袈裟だわ。家、3軒隣なんだけど？」
「…忙しくなるでしょ。大学生になったら」
黄「仕事のこと？」
控えめに頷くAは、この３年の間に随分俺の仕事への理解が深くなっていて、俺が思っているよりも、彼女なりに知ろうとしてくれていた。
そのせいで、無駄な憶測でいらない距離ができたり、こうして勝手にAが不安になってしまうことも多々あったけど。
今回は後者だったのか、そんなAがちょっと泣いてるもんだから、まさかの出来事に俺もびっくりしちゃって。
黄「泣くなって〜…。家は変わらず3軒隣。もちろん、変わらずこれからも“幼なじみ”」
あぁ、“幼なじみ”なんて、言わなきゃいいのに。
そんな一瞬の後悔、その言葉にパッと笑顔の咲くA見たら、知らぬ間に吹っ飛んでんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 446人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
