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【優吾】
いざAが部屋に来るってなると、部屋ちゃんと片付いてたっけ？とか、どうでもいいことばっかりが頭に浮かんだ。
咄嗟に家出てきたから、どんな状態だったかなんて覚えてないし。
「…ん？」
黄「あー…いや」
「なんか、優ちゃん…ガチガチ」
黄「だって…初めてだし、人来んの。しかも、お前だし」
とはいえ、もう連れてきちゃったわけだし。
ここから引き返すなんて、頭にはないし。
随分と勢いだけで行動してたんだなって、やけに冷静になったら、ちょっとだけ恥ずかしくて。
ただ、後悔してるかと言われれば、後悔なんて全くない。
「おじゃしまーす」
黄「ん、どーぞ。…え、なんか変な感じ」
「ふふっ。ん、あんまり最近、優ちゃんとこでお邪魔しますなんて言ってなかった」
黄「なんか飲むー？…一応、カフェオレのスティックあるよ。それか、紅茶？」
言ってて思った。
いつだって、Aが来ても大丈夫なようにしてたんだって。
来るはずないって、そう思ってたけど、心のどこかでは真逆のことを思っていたんだろう。
自分で気づいちゃうと、なんとなく気まずい。
けど、Aは別にそこまで気にしてなさそうで、なんだよ、意識してたのって俺だけ？なんて思ったりもして。
「ごめんね…なんも、考えずに」
しばらくの沈黙が続いたあと。
Aが口を開いたのは、謝罪のためだった。
黄「なーんで謝んの…？」
Aに謝って欲しくなんかなくて、言葉選んだけど、結局聞き方なんてそれしかなかった。
Aが並べるのは、急に連絡したことだったり、一緒に怒られたことだったり、俺の仕事のことだったり…やっぱり、謝ってほしくはなかった。
黄「仕方ないだろ。Aだって、急にしんどい現実突きつけられたんだし。怒られたのは、俺が望んだこと。それと…仕事のことは、言わないでよ」
「でも…」
黄「今回のことで、やっぱ思った。…アイドルって肩書も大事だけど、それと同じくらい…それより前に自分にあったものが大事だなって。だけどさ…」
これまでと違ったこと。
なんだかんだ、俺も…Aが送り込んでくれたこの世界を、それなりに好きになっていた。
悔しい思いして、これならいっそ…なんて思ったけど、やっぱり、あきらめきれない何かは、あった。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
