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【優吾】
約束通り、一度は病院へAを連れて帰って、まぁ…それなりに、Aは大人たちに叱られて。
やっぱりAが一人で責められんのは嫌で、一緒に叱られた。
叱られたけど、なぜか一緒に“ありがとう”なんて言われたりして、よくわかんない気持ちだった。
Aのこと、お願いね、なんてAママからAを託されて、俺のお下がりのジャージから着替えたAの手を引く病院のエントランス。
ご丁寧に、別のお下がりを荷物に詰めて。
黄「つかさ」
「ん…？」
黄「お前なんであんなにクローゼット俺のお下がりばっかなの。ほんと笑い堪えんの必死だった〜」
「えー…だって、楽なんだもん。優ちゃんの服、おっきいから苦しくないし。パジャマは…なんか、病気ですよーって格好から言われてるみたいで嫌だし…」
黄「ハハッ！分からんでもないけど。ま、気に入ってくれてんならよかったわ」
別に気に入ってるわけじゃないんだって、ただ都合がいいだけだって、そんな風に頬を膨らませるA。
さっきまでは叱られて、なにを言い返すことも、抱えたものを吐き出すこともできずに、ただ苦しそうに下を向いていたAだから、こんなことでも、ほんの少しでも笑えている、そんなことがただ嬉しくて。
黄「ん」
「え…？」
黄「手、つないだっていいだろ」
「…もう大学生なんだけど」
黄「…嫌なら、そんな消えそうな顔すんな」
強がって、笑おうとしたけど…やっぱり、Aが消えてしまいそうなのが、どうにも怖くて。
だから、手を引いた。
Aが迷わないように、じゃなくて…俺が、道標を、いや…行先を照らしてくれる光を、繋ぎ止めたくて。
黄「明日の…夜、までな」
「ん…」
黄「もうさ…思いっきり好きなことしようぜ」
今日1日…というか、明日のタイムリミットまで。
たったの1日、たった数時間くらい…肩書きも、置かれた状況も、なにもかも全部忘れて、限られたその時間くらいは、自由な2人でいたって…許されるだろうか。
「ふふっ。…ソフトクリーム、食べたい」
黄「ん、食おう。バニラソフト、持ち帰り。半分こな」
“えー、チョコだよー！”って口を尖らせる隣が、どうにも愛おしくて。
今日だけはどうか、俺らの辞書から“我慢”って言葉…消し去らせて。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
