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【樹】
正月明け、久々に風磨と遊びに出かけた。
お互い年末はそれなりに仕事ももらえてたし、なにより風磨は高校最後のテストだとか大学入試だとかで忙しくしてる中の仕事。
休みがあったとて、遊びに誘うことすら躊躇われるくらいに、スケジュールもさることながら、とにかく風磨に隠しきれない疲労が目に見えていたりして、誘えずにいた。
俺らの間柄で気遣うなんて嫌すぎたけど、そうでもしないと、風磨が倒れそうで。
菊池「お気遣い、どーもです」
青「大学、おめでとう」
菊池「おう、さんきゅ。マジやっと色々解放されたわ〜。ほんと最高」
青「それで最初に誘うの俺ってところ、お前ホント俺のこと好きだよな」
菊池「あ？うるせぇよ。つかどこ行く？何する？俺今ならなんでもできるんだけど」
青「あー、とりあえず飯食わねぇ？俺、腹減った」
久々だからって、いつもみたいに東京のど真ん中じゃなくて、ちょっと足を伸ばした場所。
全然よくわかってない場所だけど、行き当たりばったりな2人旅も悪くなくて、むしろ、日常の色々を忘れられんのがすげぇ心地良くも感じた。
菊池「…え？」
青「ん？なに、どうかした？」
菊池「いや…あー、なんか知り合いに似たやついて。でも多分人違い。いるはずないから」
そうは言いつつ、気になって仕方がないのか、ふと入った飯屋で案外時間のかかる注文の到着を待つ間、何度も何度もその方へ目線を向ける風磨。
普段そんなことないやつが、あまりにそちらを気にするもんだから、俺も気になっちゃって。
風磨がそちらを向いた隙に俺もその目の先を向けば、そこにはよく知った顔。
正確には、俺は会ったことはないんだけど。
青「…あれ、�眞呂痢�」
菊池「えっ！？」
青「え？」
菊池「え、なにお前も知ってんの？」
青「いや、俺は写真しか見たことない。樹にだけは会わせたくないとか言われたし」
菊池「てか…写真でしか見たことないお前もそう思うんなら、あれやっぱ本人だよな…」
青「…じゃないの？」
俺声かけてくるわ、なんて言い残して、1人奥の席でボーッとする彼女のところへ足を向けた風磨。
どこかアイツが、普段誰にも向けないような心配そうな顔をしていたように見えたってことは、目を瞑っておこう。
まだ俺は、何も知らないんだから。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
