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【優吾】
カッコつけて、精一杯強がって大口叩いた俺に、なにも言わずAがスッと差し出した画面。
黄「なに、これ…」
難しい言葉がツラツラと並べられて、小さな文字で真っ黒な画面は全然理解ができないどころか、目で追うだけでも頭がパンクしそうな勢い。
でもそんな画面を流すようにスクロールする中で、一ヶ所目を引く…いや、目を引いてしまうところ。
“予後不良となる”
明確にそれを示唆する文字があるわけではないけど、少なくともその可能性はあるわけで。
そんなの、誰に説明されなくたって、昔からなんとなく察しながらも、Aに限ってそんなことはと目を背け続けてきたのに。
いざ、本人からそんな言葉を差し出されてしまっては。
「分かってる…考えすぎなのは」
Aが考えてることは、俺と同じなんだろう。
取っ替え引っ替え彼氏を作ったり、距離を置かれてからというもの、大学生になって青春を謳歌し始めた時にも増して、無駄に生き急いでるように見えたのはそのせいか。
「だからさ…っ…もう…」
Aは、泣きながら笑った。
泣きながら笑って、“もう優ちゃんに甘えるのは終わりにしようと思った”って…んなこと思ってないくせに、そう強がった。
嘘つくのが下手なのは、昔から変わらなかった。
黄「それはさ…俺が、アイドルの…端くれだから？アイドルの端くれで、中途半端に幼馴染って肩書きに縋って…そんな俺だから？」
「そうだよ。…優ちゃんは、アイドルだから。だから、そのつもりだった…。もう頼らないって、甘えないって決めて…。だから、入院、したけど…言わなかった。言えなかった。なのに、風磨が…っ」
菊池「え、俺？」
「っ…風磨が、優ちゃん、連れてくるから…。あんなの、聞いたら…っ、頼りたく、なるじゃん…叶うまで、生きたいって、思うじゃん…っ！」
俺の隣で、風磨は困ったように笑って…“がんばってたのにごめんな”って、Aの頭を撫でた。
でも、連れてきてよかったでしょ？って、なぜだか全てをわかったような風磨の声に、Aは声を上げて泣いていた。
泣きじゃくるAに、なんて声かけていいかわからなくて。
こんなの初めてだった。
その夜、Aは久しぶりに高熱を出したらしい。
正月明けの退院は、叶わなかった。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
