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【優吾】
“いいから、俺と来い。会わなくていいから、来い”
風磨から、急にそんなメールが来たかと思えば、半ば無理やり連れて行かれたのは、Aが入院しているらしい病院。
お前はここにいろって、Aの病室の前に一人置いて行かれて、ただ中の声に聞き耳立てるしかなくて。
マジ、ただの不審者。
かと思えば、いきなり“俺にしとけば？”なんて風磨が言うもんだから、ふざけんじゃねぇと、思わず扉を開けてしまいそうになった。
AもAで、動揺してんじゃねぇよ…。
なんて嘆いたって、いつまでも“幼馴染”っていう肩書きにウジウジと甘えて、なにを対抗することもできずに、中途半端に動こうともしなかった俺に、なにが言えるわけじゃなあのも、重々承知。
Aの本心を聞けたのは、そんな情けない自分に嫌気が刺した時だった。
“天国でも…自慢したかったの。“すごいでしょ、わたしの幼馴染”って…”
黄「天国とか…簡単に口にすんな、バーカ」
「えっ、え…優ちゃん…なん、で…」
黄「なんで死ぬ前提なんだよ、バカじゃねぇの？お前、あん時言っただろ！中1ん時…再発して、また手術しなきゃいけなくなって…全部嫌んなって勝手に病院抜け出して！でもっ！でも…“死ぬのはもっと嫌だ”って、俺にそう言ったの、お前だろ！なのに…っ、なのに…なんで、死ぬ前提で…俺に、夢なんか託してんだよっ！」
ここが病院だとか、風磨がAの病気のことどこまで知ってんのかとか、今日は会うつもりなんてなかったとか…そんなの、全部どうだってよかった。
そんなの、全部どうでもよくなるくらいに、ムカついた。
黄「そんなこと…っ、俺、なんかに、っ…夢なんか、託さなくたってな…っ！」
「…優ちゃん」
泣きたくなんか、なかった。
Aの前で、弱い自分なんて、見せたくなかった。
見せたくなかったけど…涙があふれて、仕方なかった。
黄「…空から自慢なんかしようとすんな。地上で、俺の前で…俺が恥ずかしくなるくらいに目の前で…もういいよって、やめろよって止めるくらいに自慢しろよ…」
そしたら、“コイツが俺のこと、一番最初に見つけてくれたんだ”って、お前が恥ずかしくなるくらい、いっぱいのお客さんの前で…俺が、自慢し返すからさ。
だから…覚悟しとけ。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
