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【優吾】
ウジウジと、言い訳のような、愚痴のような、男らしさのかけらもない言葉たち。
同世代では1.2を争うほどの進学校に通って、デビュー組としての忙しい日々を送る風磨にするには到底お門違いなそれが、延々とこぼれる。
菊池「さっきからどう聞いてても、好きな女に距離置かれて、それがもどかしくてたまんない。にしか変換できないんですけど？」
黄「…まぁ、その通りだから」
菊池「うわっ、気持ち悪っ。素直すぎんだろ」
黄「うるせぇ、茶化すな」
菊池「でも、心配だよな。退院決まってるとはいえ…さほど状態悪くないのに、入院なんてしないだろ。まして、救急車で運ばれたって」
風磨の言うことはごもっともだった。
ごもっともすぎて、ぐうの音も出ない。
そもそも、まず体の心配が先走ったっておかしくもないのに、もちろんその気持ちはありつつも、それより何を伝えようか、どう伝えようかなんて思ってる自分に嫌悪感。
菊池「俺も連絡してみようかな」
黄「…あぁ、お前連絡先交換してたんだっけ」
菊池「変わってなければね。向こうから来たことは、一回もないけど」
黄「そういうとこ、アイツ律儀だから。…多分、風磨たちがデビューしたり、俺らもバーンっていったじゃん、ありがたいことに。それで、余計に意識したっぽいんだよね」
菊池「ま、そうだろうね。俺が連絡先交換しよって言った時だって、かなり渋ってたもん」
俺が会わせたことのあるジャニーズのメンバーで、Aが唯一連絡先を交換している風磨。
“なんかあの子は、大丈夫かなって思ったんだよね”とか言ってたっけ。
菊池「てか…別に、向こうがどんだけお前のことアイドルとして一線引こうとしてるからって、お前はお前貫いたらいいんじゃないの？」
黄「…っ」
菊池「だって、信じてんだろ？“アイドルである前に、一人の幼馴染”って。それに俺、お前は大丈夫だと思うよ。自分の仕事も自覚してるし、そこへの責任感だってある。それに…」
“Aちゃんが送った履歴書を、�眞呂�蔑ろにするはずがない”
風磨の言葉は、俺の胸に重く響いた。
“風磨は、なんか大丈夫なんだよね”
Aがこいつだけは一線を画したその理由は、その“自覚と覚悟”ってやつの強さ故だったんだろうと、数年越しに気付かされた。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
