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【優吾】
“入院したとか聞いてないんだけど”
いや…違うな。
“体調崩したって聞いた。大丈夫？”
んー…なんかこれも違う気がする。
ちょっと遠くない？俺らの関係からすると。
黄「んあーっ！なーんて送りゃいいんだよ…」
生まれて初めての悩みが響く部屋。
毎日顔を合わせていたくせに、家だってすぐそこの、たった2軒が間に挟まるだけの距離で、それでも意味のない、中身なんてこれっぽっちもない会話をしていた俺たち。
それも、わざわざ文字で。
普通に話すことだって容易だったのに。
今となっては、顔を合わせることはおろか、メッセージのやり取りひとつ、どうしていいのかわからない。
喧嘩でもしたの？と母親には聞かれたけど、別に喧嘩なんて…いや、もしかすると。
“ とにかく、優ちゃんは…”
“ アイドルの方が、後づけなんだよ”
すれ違ったと、そう思ったのはあの時だけだった。
他に、心当たりなんてなかった。
というか…これだって、すれ違いだなんて俺は思ってないけど、もしかすると…もしかしなくても、Aにとってはすれ違いに感じたのかもしれない。
と、今なら思う。
菊池「で、俺は合ってんの？」
急に呼び出したかと思えばなんだよって。
おれ、これでも受験生なんだけど？ってケラケラ笑いながら、それでもある程度は真剣に耳を傾けてくれてるらしい風磨。
黄「だって、こんなこと北斗には言えねぇし。でもまだ他のやつらはそんなにAのこと知ってるわけじゃないから、下手に知られたら嫌がるだろうし」
菊池「それで、Aちゃんのことも知ってるし、この世界にアイツらほど執着してるわけじゃない俺に、白羽の矢ってわけね」
黄「そーんな言い方は…してないけど」
菊池「ま、なんでもいいけど」
してないけど、してるようなもんだった。
けど、俺だって風磨が俺とは違って自分から志してこの世界に足を踏み入れたことくらい知っていた。
知っていたけど、ひとつ年下の“先輩”は、どこか地元のツレのようで、特に理由もなく成り行きでこの世界を漂う俺を、嫌な顔せず受け入れてくれたやつでもある。
仮にも2年と少し、同じグループで一緒に浮き沈みした彼のことを、俺はどこか頼りにしていた。
仕事のことも、それにこんなプライベートなことも。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
