どんな明日も… (ページ26)

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【北斗】

“一瞬を生きてる気がした”

なんとも的確な言葉だった。

それでいて、彼女の口から出るそれは、あまりに強く、重たい言葉のように感じた。

「北斗くんはさ…いつまで、続けるとか…決めてるの？」

いつか誰かに聞かれることだとは思っていた。

そこまでする必要はないという事務所の反対さえも押し切って、家族を巻き込んでまで上京をして、この秋からは二度目の高校一年生。

聞きたくない言葉ではあったけど…誰もが腫れ物のように避けてきたそれに踏み込んでくれるのが、他でもないAちゃんでよかったのかもしれない。

黒「今は、決めてないよ」

相手がAちゃんだったからこそ、変に取り繕うことなく、目の前の一瞬に生きている自分を、否定せずにさらけ出せたと思うから。

黒「なんでそんなこと聞くの？俺、ちょっと悲しいよ？」

「ハハッ。…純粋な疑問だっただけ」

黒「今は…“できるとこまで、やる”って感じかな。ほら、俺…相当わがままなことしちゃってるから。さすがに、なにも残さずには終われないのよ」

「すごいねぇ、北斗くんは。私より、ふたつも下なのに」

黒「あ〜…ふたつも下“だから”かもよ？」

どういうこと？なんてポカーンとしてるAちゃんは、クスリと笑う俺に怪訝そうな顔。

いつもの世話焼きなお姉さんっぽさはなくて、どこか子どものようにさえ見えた。

黒「浅はかなんだよ、2年分。まだ今は…熱量だけでなんとかなるじゃん、きっと。いや、分かんないよ？分かんないけど。でも、そう信じたいのよ」

「…ふふっ。青いね」

黒「そういうこと」

「…優ちゃんは、どうだと思う？北斗くんから見て…」

黒「髙地だって、まだ青いよ。アイドル髙地優吾は、まだ3歳。保育園児にすらなってないんだから」

我ながら、よく切り返したと思う。

きっとAちゃんの求めていた答えではないけど、それでも。

「私さ…普通、に…なったのね？」

黒「うん。随分人生を謳歌してるって噂よ」

「なにそれ。…じゃなくて。その…私じゃん？優ちゃんのこと…そっちに投げ入れたのは」

黒「らしいね」

「自分はあんなに“普通”を望んだくせに…人の普通を奪っちゃった気がするんだ、時々」

本当はそれを望んでたんじゃないの？

なんて…さすがに、言えない。