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【大我】
「いいんですか？こんなところ…」
桃「あぁ、うん。ここなら、よっぽど」
先輩たちから代々受け継がれる、俺たちJr.の隠れ家的な喫茶店。
ふと、Jr.やめたらここに来ることも無くなるのかなぁ…なんて思いながら、目の前でソワソワする子を見ている、なんとも言えない光景。
「あ…の」
桃「えっ…？」
「あ、えっと…いや…。その…いつも、優ちゃ…�眞蓮�がお世話になってます。あー…っと、改めて、松岡Aと申します」
桃「あ、京本大我です…」
自からここへ誘導したのはいいものの、言葉が続かないのは、さっきのあんな姿を見られてしまったからなのか、それともこの子の中身が見えないからか。
少なくとも、なにか“アイドル”としての俺に害を与える子ではないだろうと考えてしまうあたり、なんだかんだ、辞めることへの踏ん切りなんて、ついてないのかも。
「…大丈夫、でしたか？」
桃「ん？」
なんのこと？なんていうには、あんな姿を見られてしまった今の俺たち二人の間では、少し無理があったのかもしれない。
かといって、今日会ったばかりのこの子に、ペラペラと話せるような話でも…うん、ない。
桃「�眞呂箸蓮�長いの？」
「あっ、え…はい。…生まれた時から、ご近所なんです」
桃「え、あ…そうだ。年上、ですよね。全然…タメ口で」
「あぁ〜…慣れ、たら…笑」
クスクスと笑って、このギコチナサを楽しんでいる目の前の彼女は、なんだか不思議な子だった。
変にこちらを緊張させるでなく、深入りしてくるでもなくて、それでいてどこか落ち着くような雰囲気。
桃「似てる、�眞呂函�
「えっ！？」
桃「え、そんな驚く？なんか…あれだね、ほんわかしてるっていうか…ちゃーんと、自分の世界ある感じ。すごく、落ち着くかも」
「ふふっ。優ちゃんって、そんな感じなんですね。私の前だと、ただただ頼れる人だから」
そこまで話せば、また心地よい沈黙。
そんな心地よさを、気まずそうに彼女に破らせてしまったのが、なんだか申し訳なかった。
「なんで、あんなところで…あんな、苦しそうだったんですか？」
嫌なら、この質問聞かなかったことにしてくれたら…って言う彼女の言葉に、甘えるようなことはしたくなかった。
その選択肢は、なぜだか俺の中になかった。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
