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【大我】
映画の撮影に、コンサートの稽古に、これまでの夏とは比べものにならないくらいの仕事量。
加えて秋から学校が変わることもあって、充実はしているのに、心が置いてけぼりになってしまう感覚。
楽しくないわけじゃない。
やりたくないわけじゃない。
まして、不満があるわけでもなくて。
“グループじゃないんだよね。ひとりっていうか…まず、協調性がない”
その言葉は、いつも俺にブレーキをかける。
黄「どうした？」
桃「ん？あー…なんでもない」
黄「そ。あ、樹と北斗呼ばれてたからさ。そろそろリハするかも」
桃「あぁ、ありがと。行くわ」
6人でいる時間は、楽しかった。
一瞬、この5人となら…って思ったりもした。
けど、俺の頭によぎったあの言葉。
キラキラした目で、すげぇ真剣な顔して、たらたら流れる汗も気にしないでガムシャラに振付師の言葉に答える小中学生を見て、やたらと迫ってくる現実感。
リハ場へ行けば、北斗と樹が密着のカメラ相手に何か話してて、手には台本。
手ぶらなのに、こんな時だけなんか妙なプライドが邪魔をするように、話に加わって…。
“もう、辞めよう”
いつもは誰かと帰路を共にしていたけど、そんな気にもなれず。
振付師に呼ばれたとか嘘をつき、タイミングをずらして出た事務所。
お気に入りの橋で、ボーッとただ下を流れる川を見ているだけの何も考えない時間だけが、心地よかった。
「…だい、じょぶ…ですか？」
震えて、ビビったような声。
そりゃ、こんなとこでずーっと川見てたらそう思われたって仕方ないよなって思ったり。
桃「別に、そういうんじゃ…ないから」
振り返った先にいた人に、少し戸惑った。
つい先日、慎太郎が初めて会ったんだと騒いでいたあの画面の子だったから。
「えっ…きょ、、あっ…」
桃「…�眞呂痢�」
「えっ？あ、えっ、なんで…それ、、え？」
桃「あっ、ごめん…。ここじゃ、マズイかも。�眞呂搬圓噌腓錣擦靴討襪箸�なら、“いつもの喫茶店に京本といる”って送ってみて？」
振り向いた俺が、“京本大我”だと気づいた時の反応や、ここじゃまずいって言葉を出した時の反応を見ても、悪い子には思えなかった。
なんとなく、このまま別れるのも気が引けて。
気づけば、そんなことを伝えていた。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
