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【優吾】
“ごめん、休む。ノート頼んでいい？”
そんなメールが朝イチによく送られてくるようになったのは、ちょうど冬休みに入ろうとしていた頃だったと思う。
高校3年、冬。
俺は早々に大学への進学を決めていたし、Aもなんだかんだ推薦で進路が決まっていた。
黄「よっ」
「ん…」
黄「ノート、持って来た。…ダルい？」
「ん…。ｹﾎｯ、ありがと…ｹﾎｹﾎｯ、すぐ、帰って…。移ったら、どうすんの」
黄「んなに弱くねぇんだよ」
昔は体調崩すたびに優ちゃん、優ちゃんって甘えてきたくせに、俺がそれなりに仕事もらうようになってからはこんな調子。
本当は側にいてほしいのもわかってる。
マジでダメなら、今俺が座ってるベッドから蹴落としてでも家に帰れっていうのがコイツだから。
「見た、ニュース」
黄「なんの？」
「優ちゃん、お仕事。ｹﾎｯ…」
黄「あ〜、先輩たちのね」
“デビュー”という言葉に、周りが敏感になっていた。
夏に先輩がデビューしたかと思ったら、同じグループだった同世代がデビューして、なんなら俺らより全然小さい、歴も浅い子も同じグループで。
そうかと思えば、その直後に舞い込んだ先輩たちのデビュー決定。
俺はといえば、正直全然興味なくて。
でも…
黄「北斗がさ…なんか、変なんだよ」
「変って…？」
黄「んー…。あぁ、これ俺の独り言。聞いてるだけでいいや。…元気ないっていうか、やさぐれてるっていうかさ。アイツって、俺が出会った時からずっと目ぇキラキラさせてたのよ」
Aにだけは、仕事の仲間の話もよくしていた。
中でも同じ加入組メンバーの北斗の話はよくしていて、なんなら北斗もAのことくらいは知ってるくらい。
そんな北斗のここ最近の変化が、俺にはどうにも危なっかしくて。
黄「…あいつ、辞めちゃわないかな」
人のこと気にしてる場合かって言われれば、ぐうの音も出ない状況ではあるくらい、俺だって崖っぷちに立っている一人だったんだと思う。
けど…全部切り捨てて、全てを賭けていた北斗の姿を、間違いなく俺はあの仲間たちの誰より近くで見てきたつもりだったから。
“やめない理由に、なってあげなよ”
あの時アイツは、そう言って笑った。
その数年後、俺は北斗から“一生一緒”って言われんだ。
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作者名：かん。
| 作成日時：2022年11月4日 20時
